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vol.50 ページ8

side 慧



何を言われているのか、理解が追いつかなかった。
自分の未来に可能性を見いだせないまま、生きる事を諦めていた。
それなのに、自分が生まれた今日の日に彼は


「俺は伊野尾さんがいなきゃ、死んでたかもしれない。」

「……え?」

「ずっと――、」



薮さんの口からどんな言葉が紡がれるのか、何となく緊張して。
かと思えば病室のドアが開いて、タイミング悪く高木が入ってくる。


「伊野尾くん、今日は夕飯食べられそう?……あ、ごめん。邪魔だった?」


時計を見るともう8時になっていた。
元々時間が少なかったこともあってか、約束された時間はあっという間だった。


「高木、面会の時間って絶対なの?」

「ん…?どういうこと?」



俺が言葉足らずだったこともあってか、高木には理解できなかったらしい。
だけど俺はどうしても話の続きを聞きたくて、後日に回すなんて出来なくて。


「あぁ、大丈夫です。また明日出直しますんで。」


規則だからと言わんばかりに薮さんは椅子から立ち上がる。
続きはまた明日、と笑う薮さんの服の裾をぎゅっと掴んだ。
お願いだから行かないで、と声にならない感情を掴んだ手に込める。


「……あの…?」


困惑したまま固まる薮さんを余所に、俺は必死に目で高木に訴える。
流石の高木も俺が何を伝えようとしているのか分かっているようで、盛大に溜息を吐いた。



「それじゃあ消灯時間までね。それ以上は駄目だよ、いい?」


高木は持ってきた夕飯を机の上に置いて、そのまま部屋を出て行った。
また二人だけになった空間。
俺はずっと掴んでいた服の裾を離した。



「……俺と薮さんって、友達…なんですか?」

「…疑問形?」

「いや、その…」


伝えたい言葉が見つからず、あたふたしてる俺の意図を察したのか薮さんは笑って椅子に座りなおした。



「友達ですよ。少なくとも俺はそう思ってます。」


『友達』というフレーズに、一般人に比べて免疫のない俺はつい口角が上がってしまう。
友達と呼べる友達は、大ちゃんしか居なかったから。
俺はトレイの上に置かれた箸を手に取って、白米をほんの少しだけ口に運ぶ。


「食べながらでいいんで聞いてください、さっきの話。」


ほんの少量のご飯を飲みこんで、薮さんが話し始めようとしているのを制止する。




「ここからは『友達』として話しましょう。だから他人行儀な敬語もナシです。」

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天凪(プロフ) - Blue Whiteさん» たくさんの嬉しいご感想ありがとうございます。そんな風に思っていただけるだけでも幸いです。お礼を言うのはこちらの方です。本当にありがとうございます、これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2017年9月9日 0時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - blue catさん» こちらこそ素敵なご感想ありがとうございます。最後まで読んでくださって、更にはご自身の体験に重ねて考えていただけるなんて本当に光栄です。このお話が何かのきっかけになれば幸いです。応援しています、頑張って下さい! (2017年9月9日 0時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
Blue White(プロフ) - はじめまして。このお話はすごく文章が綺麗で、物語にのめり込みながら読んでいました。とっても感動できる作品でした。「ありがとう。」って言いたいです。これからも頑張ってください。応援しています。 (2017年9月7日 18時) (レス) id: 96f5815679 (このIDを非表示/違反報告)
blue cat(プロフ) - 本当に感動しました!!私自身、ずっと”才能”という言葉に囚われていました。今でも、逃げてしまいたくなるくらい、泣きたくなるくらい、周囲との力量の差を感じることがあります。でも、この小説を読んで自分の気持ちと向き合おうと思いました!有難うございました! (2017年9月3日 20時) (レス) id: 2b68782549 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - くるみさん» お返事遅くなってすみません…!嬉しいご感想本当にありがとうございます。皆様の応援あってこその作品でした!またいつでも覗きに来てくださいね! (2017年6月6日 18時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のみなぎ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年4月30日 23時

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