��-6 ページ6
・
あの日腹部大動脈のオペをした小山さんの状態も安定し、僧帽弁の手術は予定通り明日行われることとなった。
世良先生は手術前の状態確認のため、小山さんの部屋でエコーを当てている。
なぜわたしが小山さんの部屋にいるのかというと、小山さんに麻酔の同意書をもらいに来たのだ。
そう、小山さんのオペにわたしも参加することになってしまったのだ。
―――
―――――――――
「西園寺、ちょっといいかな？」
6時間にわたる手術を終え、ミルクティーでも飲むか〜とコンビニへ向かおうとしたところにわたしを呼ぶ麻酔科部長。
そしてその隣には、にっこりと笑っている佐伯教授。
えっ……嫌な予感しかしないなぁ
佐伯「今度の小山さんのスナイプ手術だが、麻酔科医は西園寺先生に入ってもらいたいと考えていてね。」
どうだろうか、と尋ねる佐伯先生の言葉は断れない無言の圧力があった。
麻酔科部長もはいと言え、と視線だけで伝えてくる。
『ワカリマシタ。』
佐伯「そうか、そうか。西園寺先生ならそう言ってくれると思っていたよ。
それじゃ、当日よろしく頼むよ。」
思わず片言になってしまったわたしに気にすることなく、にこやかに佐伯先生は部長とともに去っていった。
明日の手術で使用するスナイプのマニュアルを見ながら、暗い病院の中を歩く。
佐伯教授も部長も人使いが荒いんだから！なにも手術の2日前に言わなくたって！もっと早く言ってくれればこっちだってもうちょっと余裕をもって動けたのに！
はぁ…今日は徹夜だな。
灯りが落とされた待合室、微かに誰かの声が。
ふと足を止め、声の聴こえるほうに視線を向けると、治験コーディネーターの女性――木下さんと椅子から少しだけはみ出た黒髪が見えた。
『…渡海先生？』
病院の待合室とはいえ夜は人気がない場所に、渡海先生と治験コーディネーターの木下さんが親密そうに話し込んでいる。
ギュッと手に持っていたマニュアルを握り締め、気付かれないようにクルリと踵を返す。
そんなわたしの姿を木下さんが見ていたなんて、
そして、
その後の会話でまさかわたしの名前が出てくるなんて思ってもいなかった。
(そういえば渡海先生…あの先生とは順調ですか？)
(……順調もなにも、Aとはそんな関係じゃない。)
(あれ、わたしは一言もA先生とは言ってないんですけど…ね。)
(…………チッ)
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1495人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年5月16日 9時) (
レス) id: d1bb6ccd48 (このIDを非表示/違反報告)
ユダ - 凄く面白いです！続きが凄く気になります…更新楽しみにしてます！ P.S.ブラックペアン凄い面白かったですよね！ (2020年1月29日 2時) (レス) id: 03bfdf54f9 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 移行おめでとうございます！渡海との同期や後輩、数少ないですが恋人設定などの話しがある中、麻酔科医と言う特殊な人と絡んで行く話しは面白くて一気に読んじゃいましたｗ次回の更新を楽しみにしてます(*´ω｀*) (2018年5月15日 3時) (レス) id: 8ae73065e1 (このIDを非表示/違反報告)
Sister(プロフ) - 続編おめでとうございます。さくらさんの書く小説、すごく面白くて続きがとっても気になります。執筆応援してます！ (2018年5月14日 4時) (レス) id: 12ad576ca6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくら | 作成日時：2018年5月8日 18時
