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疑問6 ページ8

「―…で、その異能が――」



平日の昼間から公園でする話じゃないのは理解していた。

始まったそれは、私達の昔話


折角公園なのだからブランコでもやろうかと思ったが
太宰さんがよく漕いでた
と余計なことを口走った所為でなしになった。

なんでも
太宰の好きなものは全部嫌いだ、だそう



先刻の質問は中也の中で完結してしまったらしい。
何事も無かったように話に花が咲いた。






「…こんなことになるなんて、思ってなかったなァ」


先刻自動販売機で適当に買った茶を口に含む。
中也も釣られるように珈琲を飲んだ。


全くの想定外だった。

兄さんがマフィアを抜けるのも
私が元職場と対立するのも
こうやって中也と話すのも

何よりまだ兄さんを追いかけてるなんて…

当時はすぐ認めてもらえると踏んでいたのだから、莫迦である。




そもそも、中原中也と私(太宰A)の仲は良好とは云えなかった。
所詮兄を通した関係だった。


「太宰さん追いかけてマフィア抜けるとき中也の執務室に撒菱(まきびし)撒いたなァ」

「あれ手前か!!」

太宰が戻って来たのかと!
と騒ぐ中也

私も太宰だよ?





「お兄ちゃん!!」

「帰ろうか」



見た目10歳ほどの兄妹

しっかり手を繋ぎ、互いに笑みを向けていた。

誰が見ても仲の良い兄妹


「仲、いいな」

「…あれが私と兄さんなら、」

あれが私と兄さんなら
どんなに喜ばしいことか

あの2人が少し羨ましかった









青かった空は夕焼けに染まり
17時を示す(チャイム)が響いた


「中也、アンタ仕事中じゃないの?」

「ああ…帰るか」

ベンチから立ち上がる中也
背は生憎様だった。


「――『妹になるのは諦めたのか』だったっけ

もういっそ諦めてしまおうか」

中也の瞳が小さく揺れる。


だって諦めたほうが楽じゃないか
厄介事も面倒事も嫌いなんだ

十何年やっても見てもらえないなんて
もう望みも無いじゃないか


「でも……なんでかな
そう簡単に諦められないンだ」

私、諦め悪いから

そう云えば安心したように頬を緩めた。


「じゃあ、絶対自棄なんか起こすなよ」

「真逆敵に云われるとは…」

変な気分である


「じゃあね中也」

次会う時は敵だけど
と笑えば、判りやすく顔を歪めた。


「アンタのことは嫌いよ」

兄さんが嫌ってるからね


「奇遇だなァ?
俺も手前が嫌いだ、太宰の次に」


立ち去る黒い背中は先刻まで隣に居たと思えないほど遠くなっていた。




『太宰の好きなものは全部嫌いだ』

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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mikuota - 布団で見ていてめっちゃ声も出ずに泣きました青の時代の初見時ぐらい泣きました。自分で言うのも何ですが,涙腺硬い方でして夢小説でこんな泣いたの久々でした。書籍化しないかな?とか思いました。追伸お身体に気をつけてお過ごしください。 mikuota (2023年3月29日 21時) (レス) @page49 id: 7a0513a200 (このIDを非表示/違反報告)
陽毬 - 読みながらボロボロ泣いてしまいました。芥川しかり、誰かに認めてもらおうと無茶をする子が大好きです。間接的に兄のせいで死ぬならまたそれも良しみたいなスタンスが少し太宰さんに似ていて、兄妹感があって良かったです。ありがとうございましたm(_ _)m (2022年7月29日 21時) (レス) @page47 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - 屡亜さん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。兄弟がいない人にも楽しんでいただけるのは喜ばしいです!忙しさも落ち着いてきましたので、新作を考えています。案なら沢山あるんです (2020年10月17日 5時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - あずきさん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。本日エピローグを投稿させていただきました。今更更新しても、という気持ちがありましたが、コメント欄の大好きというたった一言で、書き上げる決心をしました。本当に有難う御座います。 (2020年10月17日 4時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
屡亜(プロフ) - とっても好きです! 私には兄弟がいないので読んでいて楽しいです。 忙しいとは思いますが、頑張ってください (2019年2月9日 16時) (レス) id: 42be0d16b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒いオルゴール | 作成日時:2017年8月22日 1時

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