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epilogue-1 ページ46

「いらっしゃい 名探偵」


加賀乙彦は牢に入った。

精神操作系の危険な異能力
それを考慮して、離れに新しく造られた牢屋にただ一人

珍しい客人も面識の無い探偵社員――江戸川乱歩だから話題が見つからない。



彼は、捕まった事に後悔は無い様だった。

加賀の復讐は終わったし
太宰兄妹の仲は取り持ったし
本人的には大満足の大団円だ。


ただ、

「僕死刑だと思ってました」

「Aが意見書を提出してね
君の減刑が認められたの」

なんでも一人で加賀の姉の事件を洗い直したとか。

同情の余地とか
心的外傷とか
多方面から刑を軽くしたそうだ。


「…扶けられちゃいましたね」

「お礼だと思うよ?
僕もあの兄妹の不仲は潮時だと思ったし」

ころり
棒付キャンデーが口の中を転がる。


「殺されそうになった相手にお礼ですか?
本当にお人好しなんだから…」

「…君、殺す気無かったでしょ」

ジト目の江戸川に曖昧に笑う加賀。
否定も肯定もしなかった。

「殺したいならもうとっくに殺してる
紅茶に毒を盛るなりなんなり…

忠告したのにAは割と隙だらけだったでしょ?」

「ええ 随分と」

やっぱり
と呆れた様に江戸川は溜息を吐いた。

「君が危害を加えないって直感で判ってたのかもね」

「ふふっ
少しは信じて貰えてたンですかね」

「あまり信じ込み過ぎるのも考え物だけど」

それがAの善いところなのだ
とは口に出さなくても互いに理解していた。





「嗚呼そうそう
僕駄菓子屋に行かなきゃいけないから本題に移ろう」


何処までも自分本位(マイペース)な名探偵である。

手持ちのお菓子が無くなってきたのか、鞄の中を覗いて少しばかり眉根を寄せた。


「君此処に一人なんでしょ?
つまんないだろうし今度誰かに本でも持って来させるよ」

今じゃないんだ
加賀は心からそう思った。


「それで……。あ、あった。はい!」

「――栞…?」

「Aからだよ」


じゃあ僕もう行くから

そう云って立ち上がる江戸川。



「あ、そうだ
君の推理力を評価して、服役後は武装探偵社(うち)に入れてあげるよ」









ぽつり、
一人残された加賀はAからの贈呈品(プレゼント)を見詰めていた。

――四つ葉のクローバーの栞



『なら加賀さんは?』

『…クローバー、ですかね』


『『幸福』ですか?』



「栞を挟む本なんて無いッてのに」

――莫迦な人


温かい雫が静かに頬を伝った。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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mikuota - 布団で見ていてめっちゃ声も出ずに泣きました青の時代の初見時ぐらい泣きました。自分で言うのも何ですが,涙腺硬い方でして夢小説でこんな泣いたの久々でした。書籍化しないかな?とか思いました。追伸お身体に気をつけてお過ごしください。 mikuota (2023年3月29日 21時) (レス) @page49 id: 7a0513a200 (このIDを非表示/違反報告)
陽毬 - 読みながらボロボロ泣いてしまいました。芥川しかり、誰かに認めてもらおうと無茶をする子が大好きです。間接的に兄のせいで死ぬならまたそれも良しみたいなスタンスが少し太宰さんに似ていて、兄妹感があって良かったです。ありがとうございましたm(_ _)m (2022年7月29日 21時) (レス) @page47 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - 屡亜さん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。兄弟がいない人にも楽しんでいただけるのは喜ばしいです!忙しさも落ち着いてきましたので、新作を考えています。案なら沢山あるんです (2020年10月17日 5時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - あずきさん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。本日エピローグを投稿させていただきました。今更更新しても、という気持ちがありましたが、コメント欄の大好きというたった一言で、書き上げる決心をしました。本当に有難う御座います。 (2020年10月17日 4時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
屡亜(プロフ) - とっても好きです! 私には兄弟がいないので読んでいて楽しいです。 忙しいとは思いますが、頑張ってください (2019年2月9日 16時) (レス) id: 42be0d16b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒いオルゴール | 作成日時:2017年8月22日 1時

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