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疑問43 ページ45

『そろそろ見てくれても良いのにね』

敦くんにそう零したのはいつだっただろう

その時にはもう私も兄さんも互いを見ていたのに



「私、兄さんは私に興味ないと思ってました」

「私も、Aは私の事嫌いだと思ってたよ」


詰まる所、私達はずっとすれ違って居たのだ

もっと前から通じ合っていた




「ねえA
怪我は無いかい?」

「はい 何処も」

加賀さんは私に手を出さなかった。

最後こそ危なかったが
それ以外は敵の私に紅茶を出す程の温厚派だ


そっと加賀さんを見ると、つられた様に兄さんの視線も動いた。

復讐に燃えた彼は国木田さんに捕らえられていた。


私達の視線に気付くと、屈託の無い笑みを浮かべて

「おめでとうございます」


――彼には全部判っていたのかも知れない。









「兄さん
そろそろ腕を自由にして欲しいです」

「あ、ご免ね」


傷が付かない様になのか、拘束に使われた白い西洋手拭(タオル)はふかふかだった。
お陰で痛みなンて微塵も無い。

そっと其れに手を掛けて、兄さんは慎重に解き始める。


「全く…。
Aが無茶ばかりするから心配したのだよ?」

「うふふ ごめんなさい

でも廃工場の台詞は精神的にキました」

「…ごめんよ
あれは故意に異能を使ったのかと混乱して
そんな訳無いのだけれど…」

「じゃ、おあいこですね」

「……蛞蝓にお礼云わなきゃなァ…」

「あゝ…私もです」


自由になった腕を軽く動かしてから
兄さんと向き直る。

正面から兄さんの顔を見るのも、随分久しぶりな気がする。

鳶色の瞳に私が映っていた。



「兄さん
私達やり直せるかなァ」


「勿論

もう一度、一からやり直そう
武装探偵社(ここ)で」


そう云って頭を撫でてくれた兄の手を、私は一生忘れないだろう

昔と違って成長した手は少し骨張っていて
それでも矢張り乱歩さんとは何処か違っていた


嬉しくて 嬉しくて

初めて兄さんに抱き着いた。







優しく抱き留める兄と
嬉しくて泣き喚く私を


青い月が優しく照らしていた

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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mikuota - 布団で見ていてめっちゃ声も出ずに泣きました青の時代の初見時ぐらい泣きました。自分で言うのも何ですが,涙腺硬い方でして夢小説でこんな泣いたの久々でした。書籍化しないかな?とか思いました。追伸お身体に気をつけてお過ごしください。 mikuota (2023年3月29日 21時) (レス) @page49 id: 7a0513a200 (このIDを非表示/違反報告)
陽毬 - 読みながらボロボロ泣いてしまいました。芥川しかり、誰かに認めてもらおうと無茶をする子が大好きです。間接的に兄のせいで死ぬならまたそれも良しみたいなスタンスが少し太宰さんに似ていて、兄妹感があって良かったです。ありがとうございましたm(_ _)m (2022年7月29日 21時) (レス) @page47 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - 屡亜さん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。兄弟がいない人にも楽しんでいただけるのは喜ばしいです!忙しさも落ち着いてきましたので、新作を考えています。案なら沢山あるんです (2020年10月17日 5時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - あずきさん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。本日エピローグを投稿させていただきました。今更更新しても、という気持ちがありましたが、コメント欄の大好きというたった一言で、書き上げる決心をしました。本当に有難う御座います。 (2020年10月17日 4時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
屡亜(プロフ) - とっても好きです! 私には兄弟がいないので読んでいて楽しいです。 忙しいとは思いますが、頑張ってください (2019年2月9日 16時) (レス) id: 42be0d16b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒いオルゴール | 作成日時:2017年8月22日 1時

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