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疑問33 ページ35

ヨコハマの夜は寒い。


商店街への路を足早に歩いた。

雨はいつの間にか止んでいて
ちらほらと星が瞬いていた。


なんだか気分が善い
気が楽だ

足取り軽く川沿いを歩いた。






「…太宰…さん?」

「………ん…君か
何処に行くんだい」


彼は川岸で空を見つめていた。


「一寸事件を解決しに」

「そう」

「…」

「……」

「…………」

……沈黙が辛い。


息苦しささえ感じる空間から逃げ出してしまいたい。

太宰さんの事だ
長居して機嫌を損なうより善いだろう。

私は逃げる様に足を動かした。


一瞬、水面に映る太宰さんと目が合った気がした。



「行くな」

「……え?」

「……って乱歩さんが云ってた」

「あ、…」

なんだ
太宰さんが私を引き留めたのかと思った。

…何期待してるンだか。


「何か……こう…
胸騒ぎがするのだよ」

――此処で手を放せばもう帰って来ない気さえする


「…それも、乱歩さんの言葉ですか?」

「…………そうだね」

…乱歩さんは何時からそんなに過保護になったのやら…

私はそんなに信頼が無いのか
と小さく落胆した。


「ちゃんと帰って来給えよ
――…君が居ないと気が気で無くなる」


それは、その言葉には、聞き覚えがあった。

風邪を引いたその時、夢の中で彼は確かに云ったのだ。


之は夢の続きか
朧気な幻覚なのか

―あれは夢だったのか?

そんな疑問は無理に抑え込んだ。



「約束、したでしょう?
信じられませんか?」

『ずっと隣にいよう。約束する』

そう云ったのは貴方でしょう?


目の前の男は目を見開き、嬉しそうに言葉を紡いだ。


「行ってらっしゃい」







――――――――――――――



暗い花屋を月明かりが仄かに照らす。

灯りを点けたかったが、釦が見つからず断念した。


机上に確かに置かれた青い附箋紙

一番上には、先刻も見た呪いの言葉


“竜胆の花を返して貰う”



「嗚呼 矢張り、」


「見つかっちゃった!」


―――暗転。









同時刻 武装探偵社


「…ただいま」


太宰は一直線にAの席に座る。

慣れた手付きで机に積まれた資料の束に手を掛けた。


その様子に江戸川は
素直じゃないなァ
と笑う。



「ああそうだ太宰

僕、『行くな』なんて一回も云って無いけど?」


ふいと目を背ける太宰。





刹那、江戸川は何かを察知した様に眉根を寄せた。



「太宰
意地を張っている場合じゃなくなったぞ

緊急事態だ」




――Aちゃんが、攫われた――

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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mikuota - 布団で見ていてめっちゃ声も出ずに泣きました青の時代の初見時ぐらい泣きました。自分で言うのも何ですが,涙腺硬い方でして夢小説でこんな泣いたの久々でした。書籍化しないかな?とか思いました。追伸お身体に気をつけてお過ごしください。 mikuota (2023年3月29日 21時) (レス) @page49 id: 7a0513a200 (このIDを非表示/違反報告)
陽毬 - 読みながらボロボロ泣いてしまいました。芥川しかり、誰かに認めてもらおうと無茶をする子が大好きです。間接的に兄のせいで死ぬならまたそれも良しみたいなスタンスが少し太宰さんに似ていて、兄妹感があって良かったです。ありがとうございましたm(_ _)m (2022年7月29日 21時) (レス) @page47 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - 屡亜さん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。兄弟がいない人にも楽しんでいただけるのは喜ばしいです!忙しさも落ち着いてきましたので、新作を考えています。案なら沢山あるんです (2020年10月17日 5時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
黒いオルゴール - あずきさん» 一年以上も放置してしまい、申し訳ありません。本日エピローグを投稿させていただきました。今更更新しても、という気持ちがありましたが、コメント欄の大好きというたった一言で、書き上げる決心をしました。本当に有難う御座います。 (2020年10月17日 4時) (レス) id: 0d8fff5907 (このIDを非表示/違反報告)
屡亜(プロフ) - とっても好きです! 私には兄弟がいないので読んでいて楽しいです。 忙しいとは思いますが、頑張ってください (2019年2月9日 16時) (レス) id: 42be0d16b8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒いオルゴール | 作成日時:2017年8月22日 1時

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