深夜の帰り道（１） ページ35
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今日もいつものように元気に残業。
「あ゛−！首がイった！！！！」
嘘です。明々後日に夢ノ咲で開催される新入生歓迎ドリフェスのための衣装を準備するためにずーっと下を向いていたらピキッっとやってしまった。
『大藤ちゃんいつも頑張ってくれてるし早く帰っていいよ？…と言ってももう12時まわってるけど…。』
早く帰るって何だろうね？あはははは、！
少し脳内回路がおかしくなりかけているのは分かっていたし、
大学時代の部屋をこれからも使うつもりでいたけれど、残業続きで終電がなくなって自分の家に帰れなくなったのが3週間くらい続いた時にESの社員寮に引っ越すことを決めた。
「でも…先輩も…」
私と同じくらい残業をしてる先輩もいるのに私だけ帰るなんて…
『大丈夫。明日はDFF(Dream Freshman Festival)リハでしょ？そっちの仕事頑張ってもらうからそれに備えて体力温存しといて！』
あ…そういう魂胆でいらっしゃった…。
先輩に押し切られ、半ば追い出されるようにESを後にする。
DFFは新人アイドルの為のステージで、毎年トラブル続きのスタッフ泣かせイベントだ。
明日を思うとちょっと気が重たいし、12時まわってるけど、
さっき痛めた首を労わりつつ固まった首をゆっくり回しながらエントランスをくぐる。
「あれ？誰だろ…」
アイドルの出待ちにしては時間が遅すぎる。
『あ！Aちん！』
仁兎くんだ。
「どうしたの？こんな時間に。誰か待ってるの？」
こんな時間に人はほとんど残っていない。
あ、夢ノ咲だから零くんとかかな。
なずな「うん。Aちんを待ってた。」
「え？何か用事あった？」
まさか自分だとは思ってないから拍子抜けする。
何か約束してたっけ…？
なずな「ううん。なんもないよ。最近この辺不審者出るらしいから護衛？」
わ、すごい破壊力。
街灯に照らされ少しだけ白さが目立つ顔で微笑んでくるから騙されそうになった。
「だめだよ。アイドルに何かあったら私の立場無くなっちゃう。」
少しきゅんと来てしまった自分を律しながら言葉を紡ぐ。
私を待ってる間に仁兎くんが襲われましたなんてことがあったらES内で大分問題になる。
なずな「ちょっと！おれだってこれでも男なんらかりゃにゃ！」
「ふふ、でも気持ちは嬉しい。ありがとう。」
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作者名：小野屋 | 作成日時：2021年2月6日 18時
