クラフトワークショップ(1) ページ6
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私の夏休みはバイトとサークルがほとんどを占めていた。
バイトは近所にある個人経営の定食屋さん。
上京する前にお母さんから料理を多少は習っていたけど、一人暮らしをするうえでさみしい上にご飯がおいしくないのは耐えられない!と思い、今のバイト先に応募。
すごく優しい店主夫婦に恵まれ、たくさんおいしい料理を教えてもらったし、残ったおかずは持って帰ってねってタッパーとかにいれて丸ごとくれた。
大学では手芸サークルに所属している。
新入生歓迎期間のときにサークルを探すためにふらふらとサークルエリアに立ち入った瞬間ビラを半ば無理やり押し付けられ、だいぶHPが削られていたところにまあるい笑顔で手を差し伸べてくれたのが今私が所属する手芸サークルの一つ上の先輩、「まるちゃん先輩」だ。
ちなみに苗字も名前も「まる」とは関係ない。
まあるい笑顔の「まるちゃん」らしい。
実際のところ手芸サークルはほとんどしゃべっているだけのサークルだけど、刺繍のやり方を習ったり、取れたボタンを付けてくれたりのびのびマイペースに活動をしているサークル。
今私がお弁当を入れるのに使っているトートバッグはまるちゃん先輩が図面を書いてくれて、その通りに作って完成させたもの。
普段は各々が好きなことをやるサークルだけど、夏休みだけはれっきとした手芸サークルらしい活動がある。
それが「クラフトワークショップ」の運営。
大学の近隣に住む子供たちを対象に色々なものの作り方を教えるワークショップを八月の第三週の一週間行う。
要するに自由研究のお手伝いといったところだろう。
手芸サークルの前の週には科学サークルが色々な実験を一緒にやるワークショップを開催していて、その前にも他のサークルが一週間ずつイベントを行っているんだとか。
このクラフトワークショップは毎回盛況で、夏休みに突入してからはその準備に追われてた。
いろんな手芸屋さんとか百円均一ショップとかをまわって材料をかき集めたり、小学生や幼稚園児でも理解できる設計図の作成をしたり、やることはたくさんあった。
私は来てくれた人に配るサンキューカードの絵を任されていた。
まるちゃん先輩が「Aちゃんの絵すごくかわいい!」って私がサークル中に何気なく書いていた意味もない兎の絵をみてはしゃぐから成り行きでそういうことになった。
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作者名:小野屋 | 作成日時:2020年5月28日 17時