2度目の出会い(2) ページ49
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※D…ディレクター
D「あ!キミが大藤さんかな?今日はよろしくね!」
「よろしくお願いします…それで…仕事内容は…?」
D「あそこに衣装が山積みになってるんだけど、あれの修正をしてほしくて!どこをどう直せばいいのかはアイドル達に自分で伝えるように言ってあるから…!んで、期限なんだけど、18時からリハスタートだからそれに間に合うようにお願いします!一応リハの順番は衣装の近くに貼ってあるから見といてね!」
「わ、わかりました…!」
あと3時間しかない…
早速衣装を手に取る。
あ、これ仁兎くんの…
『えっ!』
「え?」
声のする方を振り返るとそこには今手に持っている衣装の持ち主である、仁兎くんが。
なずな「なんでここにいるんら?」
「えーっと…今、衣装制作係のアルバイト始めてて…」
なずな「そういうことなのか!」
今まで気まずくてLINEも挨拶もできなかったくらいなのに。
何事もなかったかのように話しかけてくる仁兎くん。
なずな「こっちでも改めて、よろしくな!」
「…うん!」
あーやばい。
泣きそう。
「ところで…衣装修正ってどこをどうすればいいの?」
じわりと緩みそうになった涙腺を強制的に引き締める。
なずな「えっと…今日のパフォーマンスで邪魔になるからこの辺のじゃらじゃらした装飾を取ってほしいのと、少しだけ丈を詰めてほしいんだ!」
「了解!すぐ直すね。」
あぁ、よかった。
普通に話してもらえて。
もう2度と今までみたいに話せないかと思ってた。
平凡な私が欲張りすぎた罰が当たったんだって思ってた。
今目の前に仁兎くんがいること、私と普通に話していることが信じられなくて、急がなくちゃいけないのにちらりと横眼で確認してしまう。
いつの間にか滑舌が改善されていたことに気付かないくらいには気持ちが高揚していて落ち着かない。
もう好きじゃない。
好きなのはやめる。
でも、せめて仁兎くんのそばにいたい。
身勝手な思いがふつふつと湧き上がってくる。
けれど、仁兎くんの気持ちが私に向くことはきっとないから。
2回目の出会いでリセットをしたんだ。
何も同じことを2回も繰り返す趣味はない。
だから、私の気持ちはそっと蓋をしてなかったことにするんだ。
それが精いっぱいの償い。
なんでもないような顔をしていないと。
まだ気にしてるんだ、まだ好きなんだってバレたらもう私の居場所はここにはない。
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作者名:小野屋 | 作成日時:2020年5月28日 17時