タルトデート(２) ページ22
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「ぅわ！びっくりした！」
後ろを振り返るとおそらく仁兎くんがいたずらっ子みたいにニヤッと笑ってる。
おそらく、というのもそこには黒髪の男の子がいるからだ。
声は仁兎くんのまま。
「髪、黒いのにしたんだね」
なずな「ばれたらまずいからな！」
トレードマークのアシンメトリーな金髪はどこへ行ったのやら、黒髪短髪の仁兎くんが笑った。
「黒髪もいいね。目の色に映える。」
特に気にしてませんよ、みたいな口ぶりしてるけど正直内心ドキドキでいっぱい。
黒髪に兎みたいな赤い目がすごくきれいで吸い込まれそう。
なずな「ありがとな！それじゃあ見つからないうちに食べに行こう！」
「私なんかのために危険なんか冒さなくていいのに。」
私だって仁兎くんが好きだとはいえ、一ファンとして、スキャンダルなんて起きてほしくない。
ギリギリまで一応説得はしてた。
そしたら仁兎くんは
『斎宮にウィッグ用意してもらうから！絶対に見つからないように対策していくから！』
なんて言って今日に至る。
なんだかんだで流されてる私も私だけど。
なずな「Aちんにそこのお店のタルト絶対に食べてほしいからな！」
「そんなにおいしいの？」
一ミリも可愛いことが言えない私に満面の笑みを向けてくれる仁兎くんは天性のアイドルだ。
なずな「今までで食べたタルトの中で一番おいしかったんだ！」
Ra*bitsにいるときの仁兎くんは少しお兄さんぽいけど、今はすごくはしゃいでて弟っぽい。
「ふふ、」
なずな「あ！笑うにゃ！」
「わ、笑ってないよ？」
なずな「絶対わりゃってた！」
「言えてないよ？」
今日は同級生と美味しいモノを食べに行くだけ。
それ以上でもそれ以下でもない。
定期的に私の頭の中をよぎる。
そんなことわかってるんだってば。
むしろ何かあっちゃいけない。
アイドルと一般人なんだから。
なずな「Aちん？ついたけど…」
「ん？あ、ほんと？」
いかにも「東京」感の強いオシャレなタルト専門店『
「ここ…すごく有名なところじゃない…？」
流行に疎い私でもいろんなメディアを通して特集されてたのを知ってる。
なずな「んー？そうなのか？前に泉ちんに差し入れでもらったんだよね」
私の記憶が確かなら予約を取るのがものすごく難しいと言われている全席個室の高級店、という紹介だったはず。
…すごすぎる。
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作者名：小野屋 | 作成日時：2020年5月28日 17時
