日常386 いつでもそこに立っている ページ41
「こーんにーちはー。」
「おう、また来たんか。…暇か?」
「暇じゃないわ!」
少女がやって来たのは火貂組、左馬刻の事務所まえである。相変わらず門番している有馬の元に、相変わらず緩い空気でやってきた少女。
有馬は、ため息を吐きながらもいつも通りの有馬が良く知る少女の姿に安心したように頬を緩めた。
「何?何か良いことでもあったん?」
目ざとい少女は有馬の顔を覗き込んで問いかける。
「…あ〜、そうだな。あったわ。」
有馬は、一瞬顔をしかめたが次の瞬間、弾けたようにくしゃりと笑うと、少女の頭に掌を乗せた。
「そう?なら良かった。」
少女は撫でられて悪い気がしないのか、そのまま有馬に撫でられる。
「じゃ、左馬刻さん待ってっから行って来い。んで、叱られてこいや。」
有馬はひとしきり撫で終えると、少女の背中を少々乱暴に押した。少女は体制を崩し前のめりになりながら振り返る。
「まっじか!友ちゃん!何か察した!ありがとう!」
先ほどの言葉で、有馬が今回の事件に関わっていたことを察した少女は、有馬にお礼を言いながらも、そのまま事務所の中へと足を進めていった。
_『…有馬、ここにいて。』
そう言って震える少女はもういない。
有馬は服の裾をこっそり擦った。
「…やっぱアイツ、うるせぇな。」
_おかえり。
それでも、その賑やかさに安心して、もう一度少女に会えて嬉しいと思う自分がいるからくすぐったいのだ。
「…さ〜て、今日も門番やるか〜。」
有馬は背中を伸ばすと雰囲気を一変させ、火貂組若頭:碧棺左馬刻の番犬としての仕事を全うするのだった。
_緊張するなぁ。
少女は左馬刻の部屋の前に立っていた。
勿論、この時間に少女が来ることを左馬刻は知っている。
つまり、この扉の先には左馬刻がいることが確定なのだ。
左馬刻は少女の無茶を酷く嫌う。前回の事件で互いの気持ちを打ち明けて、理解はしていても、嫌なものは嫌なままなのだ。
互いに勝手に助ける。
危なくなったら頼る。
そんな暗黙の了解が2人の中には出来ていたのに…。
__コンコンッ
少女は意を決してドアをノックした。
心臓が酷く音を立てる。
「おう、入れや。」
ドアの向こう側から左馬刻の声がした。
ゆっくり、ゆっくりと少女はドアを開ける。
「えっと、こんにちは。」
「おう。」
そーっと顔から覗くと、そこには_
「やっと来たか。ほら、ここ座れ。」
何故か、嫌にご機嫌な左馬刻様が隣を叩いて座っていた。
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いもけんぴ(プロフ) - あきえさん» あきえ様、コメントありがとうございます。とても嬉しいです!!左馬刻様ですね!お任せくださいませ!私も、実は左馬刻様が最推しです… (2022年7月10日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
あきえ(プロフ) - 初め芋けんぴ様の作品大好きで読ませて頂いています!あまり無理しない範囲で更新お待ちしています!(出来たら、出来たらで良いので!左馬刻様の登場!!よろしくお願いします!!) (2022年7月9日 21時) (レス) @page50 id: 7956ee69df (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - 蒼井とーるさん» 蒼井とーるさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。お褒めの言葉も嬉しい限りです!私も、蒼井さんの反応集好きで、読ませていただいてますよ! ポッセのお茶会、良いですよね〜。絶対平和です。 (2022年7月9日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 今回も最高でした…!ポッセのお茶会に混ざりたい今日この頃です。 (2022年7月8日 10時) (レス) @page49 id: 90146b8ac1 (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - なのはさん» なのは様、コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。パスワード設定の作品の公開はもう少しお待ちいただけますと幸いです。更新も、私生活が忙しくままならない事を申し訳なく思っております。 (2022年6月25日 10時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2021年6月19日 23時