番外編 不器用な長男に精一杯の愛を ページ30
7月25日の23時50分_
布団がこすれる音が三郎に部屋に響く。
夜更かしをしすぎると一郎に怒られてしまうため、いつものように寝たふりをしながら自室にこもる三郎は、ベッドの中でソワソワしていた。
スマホの画面を見ては深呼吸を繰り返す。
その姿はさながら、好きな子からの返信を待つ健気な中学生だ。
しかし、理由は色恋なんて浮ついたものではない。
「…あと、10分。」
三郎にとっては命より大切な日が後10分で訪れようとしていた。
「…一兄、喜んでくれると良いな。」
三郎はふわりと微笑んだ。
23時55分_
「兄ちゃん。」
二郎も寝られずにいた。
机の上に置いてある包み紙を見ては表情を綻ばせ、足をばたつかせる。いつもならうるさいと文句を言ってくる弟も、今は自分の事で精一杯で来ない。
__バタバタ
そんな音が二郎の部屋に響いた。
「…あと、5分。」
二郎は時計を眺めてリビングに出て行く準備を始めた。
「一郎、今日もお疲れさん。」
リビングのソファーで漫画を読む一郎に近づいたのは少女。
その手にはグラスに入ったコーラが。
「あぁ、わりぃな。」
「どういたしまして〜。」
少女はちゃっかり一郎の隣に座ってアイスティーを飲み始めた。
「寝ねぇのか?」
一郎は不思議そうに少女の顔を覗き込む。
「まだ寝ないかな〜。」
少女はそう言いながらチラリと時計を盗み見る。
秒針がチクタクと動いている。12の数字に針が揃うまで後_
_5…4…3…2…1…
__カチッ
揃ったその瞬間_
「兄ちゃん!」
「一兄!」
「一郎!」
廊下からドタバタとした足音がした後、二郎と三郎がリビングに顔を出す。
そして、少女は一郎の隣でクラッカーを構えた。
「「誕生日おめでとう!」」
「お誕生日、おめでとうございます!」
__パァン!
その音と共に、一郎の頭に紙切れが数枚乗る。
二郎と三郎は心底幸せそうに、兄である一郎を祝った。
「…マジか。」
一郎の前にはしてやったり顔の3人が並んでいる。
「ビックリした?」
少女が笑顔で問いかけた。それほどに一郎の顔は唖然としていたのだ。
「正直、かなり。」
しかし、その数秒後には一郎は表情を綻ばせ幸せそうな顔を見せる。
「兄ちゃん!俺、プレゼント準備してるんだよ!」
「一兄!僕もです!」
二郎と三郎は同時に一歩前に踏み出して、一郎に詰め寄って競い合うようにプレゼントを差し出した。
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いもけんぴ(プロフ) - あきえさん» あきえ様、コメントありがとうございます。とても嬉しいです!!左馬刻様ですね!お任せくださいませ!私も、実は左馬刻様が最推しです… (2022年7月10日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
あきえ(プロフ) - 初め芋けんぴ様の作品大好きで読ませて頂いています!あまり無理しない範囲で更新お待ちしています!(出来たら、出来たらで良いので!左馬刻様の登場!!よろしくお願いします!!) (2022年7月9日 21時) (レス) @page50 id: 7956ee69df (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - 蒼井とーるさん» 蒼井とーるさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。お褒めの言葉も嬉しい限りです!私も、蒼井さんの反応集好きで、読ませていただいてますよ! ポッセのお茶会、良いですよね〜。絶対平和です。 (2022年7月9日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 今回も最高でした…!ポッセのお茶会に混ざりたい今日この頃です。 (2022年7月8日 10時) (レス) @page49 id: 90146b8ac1 (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - なのはさん» なのは様、コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。パスワード設定の作品の公開はもう少しお待ちいただけますと幸いです。更新も、私生活が忙しくままならない事を申し訳なく思っております。 (2022年6月25日 10時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2021年6月19日 23時