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日常370 少女の帰る場所 ページ14

「えっと、これどういう状況?」

頭を下げる山田三兄弟と、それを無表情で見ている父、龍琉。
少女は龍琉が少女の引っ越しを考えていることをまだ知らず、山田三兄弟が目の前で自分の父に頭を下げる理由が分からなかった。

「そうか。」

たった一言。しかし、その声は酷く優しい。

「頭を上げてくれ。俺は別に君たちが信用できなくてAを取り上げようとしたわけじゃ無いんだ。」

「えっと、お父さんこれどういうこと?」

少女が龍琉の腕を掴んで問いかける。龍琉は一瞬だけキョトンとしたがすぐに把握した。

「お前には説明してなかったな。俺は今回、お前の物件探しに来たんだが…必要なかったようだ。」

必要なかった。その言葉を聞いた瞬間、山田三兄弟が一気に顔を上げる。

「「「じゃあ!!」」」

「あぁ。頭を下げるのは俺の方だな。こんな娘だが、これからもAをよろしく頼む。」

龍琉はまっすぐ向き合って頭を下げた。
一郎はおろおろしているが、二郎と三郎は嬉しそうにはしゃいでいた。

「成程。状況が読めたぞ。じゃあ、私も。」

少女は段々状況が見えてきて、自分のやるべき行動が見えた様だ。
未だ頭を下げている龍琉の隣に立ち山田三兄弟に向き合う。

「こんな私だけど、これからもお世話になります。」

と少女も頭を下げた。龍琉はそれを横目で見て満足そうに微笑む。
どうやら、少女も頭を下げるのを待っていたようだ。

「こちらこそ、これからもよろしくお願いします。」

一郎が、吹っ切れたように笑いながら両手を差し出した。右手は少女に、左手は龍琉に。
乾親子は頭を一度上げると、笑顔でその手を取った。

これにて、少女引っ越し問題も一件落着。
少女の居候がまだ続くことが決定した。


「…ねぇ。」

「何だよ。」

同時刻、少し色の違う2つのピンクがコソコソ話をしていた。珊瑚と乱数だ。
珊瑚が気まずそうに乱数の袖を掴み引き留めると乱数は不機嫌そうに振り返った。

「…ありがとう。あと、ごめんなさい。」

珊瑚は少し恥ずかしそうに、そう笑った。
それを見て乱数は少しだけ驚く。

「お前、笑えたんだな。」

「えぇ。まぁ。…アタシを助けてくれた貴方はきっと…彼女に人にしてもらったのね。」

珊瑚は乱数の心臓がある左胸に手を添える。

「不格好だけど、アタシたちきっと人間なんだわ。」

乱数の目が見開かれる。

「…じゃあね。アタシにも帰る場所が出来たから。」

珊瑚はそれだけ言うと、踵を返して龍琉の元へと歩いた。

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いもけんぴ(プロフ) - あきえさん» あきえ様、コメントありがとうございます。とても嬉しいです!!左馬刻様ですね!お任せくださいませ!私も、実は左馬刻様が最推しです… (2022年7月10日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
あきえ(プロフ) - 初め芋けんぴ様の作品大好きで読ませて頂いています!あまり無理しない範囲で更新お待ちしています!(出来たら、出来たらで良いので!左馬刻様の登場!!よろしくお願いします!!) (2022年7月9日 21時) (レス) @page50 id: 7956ee69df (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - 蒼井とーるさん» 蒼井とーるさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。お褒めの言葉も嬉しい限りです!私も、蒼井さんの反応集好きで、読ませていただいてますよ! ポッセのお茶会、良いですよね〜。絶対平和です。 (2022年7月9日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 今回も最高でした…!ポッセのお茶会に混ざりたい今日この頃です。 (2022年7月8日 10時) (レス) @page49 id: 90146b8ac1 (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - なのはさん» なのは様、コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。パスワード設定の作品の公開はもう少しお待ちいただけますと幸いです。更新も、私生活が忙しくままならない事を申し訳なく思っております。 (2022年6月25日 10時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2021年6月19日 23時

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