人間洗浄機９

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先週の火曜日

麻天狼の目撃情報が功を奏して満員だった。
しかし、通常なら普通の平日。
人手が明らかに足りなかった。

そこでだ。
イケブクロで困ったときに対応してくれる人たちと言えば？

「萬屋ヤマダの山田一郎です！」

一郎がヘルプで来てくれた。
少女がバタバタしながらも一郎にホールの仕事とドリンクの作り方を教え込んでいく。
一郎も呑み込みが早く、すぐに戦力になってくれていた。

「１番テーブル次パスタ急ぎで！逆に４番はペースが遅いので後回しでお願いします！」

と、このように素晴らしい働きっぷりで、安西もにっこりだ。

そうやって、１時間忙しさと戦っていたところ…
事件は起こる。


「お姉さん、可愛いね〜。」
「本当だ！連絡先教えてよ！」
「俺らお客様だろ〜？サービスサービス！」

酔っぱらったチャラい男客が少女に絡み始めたのだ。
正直言ってかなり迷惑だ。

いつもなら
「あ？その口縫い留めんぞゴラ。」
と一発殴りたいところだが、なんせ相手は腐ってもお客様だ。

そして、不運なことに普段なら
「うちの大切なバイト生に何か御用でしょうか？」
と、含みのある笑顔で来てくれる安西は鬼の形相でオーダーをさばいていて無理そうだ。

いつも来てくれる仲良しの常連さんも、今日はいない。
なんせ今日は麻天狼目当ての一見さんで溢れていて忙しいのだ。

竜ケ崎が心配そうに見ているが、竜ケ崎だって女の子だ。
『来ないで。』
と少女は合図を送っていた。

＿さて、どうしようか。
少女が頭を抱えていたその時、


「あの、俺の大事な人に何か用っすか？」

一郎が少女をかばうように割り込んできた。
少女は思わず目を見開く。

「あ？お兄さんもここの店員じゃーん！」
「え〜？何々？バイト内恋愛〜？」
「ヒューヒュー！お熱いねぇ〜！！」

一郎が出てくると、悔しさまぎれに騒ぎ出すチャラ男客。
他のお客様は居心地悪そうにコソコソしている。

＿何か言わなきゃ。
少女が口を開いた瞬間＿

「え？」
「そうっすね。」

一郎が少女の腰を引き寄せる。
突然の事で少女は対処が出来ない。
キョトンと一郎を見上げると、鼻がぶつかりそうな距離に一郎の顔が。

＿一郎、顔良いんだよな〜。
呑気に一郎の顔をまじかで見ていると、

「え…マジかよ。」

他の人からはキスしているように見えたようで、チャラ男客は顔を真っ赤にしている。

「これで満足っすか？」

一郎はニヤリと笑ってチャラ男客を見下ろした。

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