人間洗浄機９

日常330　男のプライド ページ34

レンゲでスープを掬う。
そのまま口元へ運ぶと香ばしい香りが鼻を掠め、喉が期待を膨らませてゴクリと鳴る。
キラキラ輝く、そのスープをすすると＿

「美味し！」

「ははは。気に入ってもらえてよかったよ。」

トムに連れられて少女がやってきたのは、ラーメン屋。
ここは醤油ラーメンがおすすめらしく、少女とトムは並んで醤油ラーメンをすすっていた。

「このチャーシューも美味しいです。」

チャーシューに噛り付くや否や、少女の顔が綻ぶ。
トムはそんな少女の反応を見て微笑んだ。

「はは。君は本当に美味しそうに食べるなぁ。一緒に食べているのにお腹がすいてくるよ。」

「じゃあ、替え玉決定ですね。」

ニヤリと笑う少女に反抗するように、トムは大口を開けてラーメンを頬張った。
そして、少女をちらりと横目で見る。
＿女性をラーメン屋に誘うと怒られると思っていたんだが…。

海外の男性らしい意識だ。
確かに、デートでラーメン屋は…人によるがあまり色気は無いな。

しかし、トムは少女の人柄を信じて、本気でおすすめのラーメン屋さんに連れてきたというわけだ。
まぁ、考えてみろ。あの理鶯のご飯も幸せそうに食べるのが乾Aという少女だ。ようは美味しければ何でもいいのだ。

「すいませーん、替え玉お願いしまーす！」
「俺も頼む。」

気が付けばお椀の中に麺の影は無く、２人は堪らず替え玉を注文した。

20分後＿＿

「ありがとうございましたー！」

「ごちそうさま。」
「…ごちそうさまでした。」

ラーメン屋さんの暖簾をくぐり出てきたのは、満足そうな表情のトムと少しムスッとしている少女だ。

「…お手洗いに行くフリしてお支払いを済ませるのはズルいと思います。」

「何の事かな？」

「イケメンが憎い。」

「ありがとうと言っておこうかな。」

実は、会計戦争が起こる前にトムが勝利を収めていたのだ。
イケメン過ぎる手口で。

それがあまりにもイケメン過ぎたのと、奢られてしまった事と…色々重なって少女はムスッとしていたのだ。

「…トムさん。」

「何かな？」

「ごちそうさまです。ありがとうございました。」

少女がムスッとしながらも、奢られたからにはとお礼の言葉を述べる。
すると、トムはくすりと笑い、

「どういたしまして。またご飯に行こう。俺の奢りで。」

「…はい。」

今度は素直な反応を見せる少女がおかしくて、トムは少女の頭をくしゃりと撫でた。


この短時間でトムがこの少女に絆されているのは確かなのだった。

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