人間洗浄機９

日常322　シブヤの悪魔 ページ26

「おーおー。可哀そ。」

少女は黒也と高みの見物をしていた。
乱数に渡された耳栓のおかげでFring Posseの繰り出す幻惑からは逃れているものの、SPACE COLONYの怯えようを見るとかなり怖い思いをしているのがわかる。

＿多分、彼らが見ているのはゴーストに食べられる幻惑かなぁ。

少女はそれを想像すると背筋が凍るとともに、ざまぁみろと思う。幽霊を使って人を恐怖に落としたなら相応の落とし前だ。

ゴーストに関わらず、大きなナニかに捕食される恐怖はすさまじいだろう。
実はそれを知ったうえで乱数はその幻惑を見せていた。まぁ、少女と作戦で決めていたのだ。

＜物語の終わりは、愚かな男が幽霊に大口で食べられてしまいましたとさ。＞

なんとも鬼畜な終わりだ。
少女が決めたことを幻太郎が言い直しただけだが。
これが今回の事件の結末なのだ。それをFring Posseとそのマネージャーが決めたのだ。変え難い決定事項であった。

＿そろそろ頃合いかなぁ。

３人で抱き合って怯えているSPACE COLONYの姿を見て少女は黒也に後を任せて下に降りて行った。


「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ！」」」

少女が会場にたどり着くと、ちょうどSPACE COLONYの３人が悲鳴を上げて気絶していた。

「乱数、幻太郎さん、帝統、お疲れ様〜。」

「あ！A〜！ありがとね。」
「ふふふ。物語はシナリオ通り完結しましたよ。」
「ちぇっ、骨のねぇ奴らだぜ。スリルの欠片もねぇや。」

少女が笑顔で合図すると、Posseの３人も同じように笑顔で返事をしてくれた。
＿こ、ここに悪魔がいます。
黒也はそれを見ながら１人、震え神に祈っていた。
…顔怖いぞ！

「あ、じゃあこいつ等の処分してきますね。このままお客さんをお通しするので！」

少女はそう言いながら３人を引きずって裏口の方に歩いていく。

「ありがとう！お願いね！あ、写真撮って後で僕に送ってね〜。」

乱数は笑顔で少女を見送る。
幻太郎と帝統は
＿いや、こいつ等怖すぎ。
と震えていた。
シブヤのハロウィンには幽霊では無く悪魔が出たようで。

そのまま、少女は裏口に消えていった。
その後すぐにおねーさん達が入場してライブハウスがライブハウスらしく賑わいを取り戻した。


「よがっだー！」

黒也はその様子を見ながら号泣してその場に崩れ落ちた。
これでこれからもシブヤで経営できるとホッとしたのだ。


「中々コケティッシュな奴らじゃないか！」

トムはライブハウスに入りながらカメラを構えて満足そうに微笑んだ。

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