人間洗浄機９

日常317　笑顔を忘れることなかれ ページ21

乱数の事務所に帰ってきた一同。
Posseの３人はソファーに座り、少女はそのソファーの背もたれに体重を預けて後ろから乱数のスマホの画面を見つめていた。

『確かに、そのライブハウスCOLONYってのは関係者の間では相当評判わりぃな。』

乱数のスマホの向こう側から一郎の声がする。
その画面には、いつもの椅子に座る一郎と、その両隣に立つ二郎と三郎の姿が映っている。

＿まるでヤクザじゃねぇか。
少女はそう思いながらくすりと心の中で笑う。

『今、シブヤでまともにやっていけてんのがそこだけだからって出演者のギャラは値切るし、定員の態度もデカくてやりたい放題だ。』

一郎の言葉を聞きながら少女の額に青筋が浮かび始める。

『３人の共同経営者がSPACE COLONYって元ラップグループのメンバーで、質の悪さは筋金入りらしい。』

一郎がそう言うと、隣の三郎がタブレットを素早く操作して、SPACE COLONYの写真を見せてくれた。

＿顔、覚えたかんな。
少女はその３人の写真を見てニッコリ笑う。

「…元ラッパー。」

乱数がぼそりと呟いた。
その呟きを聞いて、
＿＿ピッカーン

「閃いた〜。」
「そう言うことか！」

少女と幻太郎が同時にこの＜シブヤの幽霊＞のカラクリの仕組みを知った。
しかし、理解が遅れている帝統は不思議に思いながら幻太郎と少女の顔を交互に見る。

「幻太郎さん、言っちゃって。」

少女がニッコリと幻太郎を見下ろす。この話を私にさせてみろ、私は怒りで暴れるぞ。そう副音声が聞こえた。
阿修羅が見えたと幻太郎は後に語る。

「…ヒプノシスマイクを用いて幻覚を見せれば、恐怖を植え付けることが出来る。」

「そうか！幽霊の幻覚か！」

幻太郎の説明を聞いた瞬間に、帝統は理解した。

「そんなの許せないなぁ。お姉さんたちの楽しみを奪って！」

乱数は拳を握る。
少女はその後ろでただただニッコリ笑っていた。

「冗談じゃないよ！」

乱数は突然ソファーから立ちあがった。
自然と幻太郎と帝統の視線が乱数に集まる。

「…もう一度、あそこでライブをやる。」

「でも…この騒動の中じゃ。」

「客が来ないことは変わらないでしょう…・」

乱数の言葉に、弱気なことを言う帝統と幻太郎。
確かに、２人の言っている言葉は正しいのだが…

「甘ったれんな。」

「「え？」」

背後から禍々しい声がした。
２人が恐る恐る振り返ると…

「やられたらやられた以上にやり返す。倍返しだろーが！」

少女が拳を振りながらニッコリ笑っていた。

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