人間洗浄機９

日常309　逃げ場無し ページ3

「二郎ちゃんもお風呂上りか。」

「んでそんなことわかんだよ。」

「ん〜？フローラルの香り〜。」

「嗅ぐな！」

少女は二郎の鎖骨付近でおでこをグリグリする。

二郎は引きはがしたい気持ちもあるが、少女に対して乱暴はあまりしたくない。
それに、別に嫌なわけでは無いため、二郎の行き場のない手はウロウロしていた。

「あれ？もしかして私臭いのでは？」

あまりにもお風呂上がりの良い香りが二郎からするので、少女は焦って離れる。
二郎はそれによりようやく解放された。

「え、私臭い？」

「知るか！早く風呂入れば良いじゃねぇか。」

「二郎ちゃん、今日もツッコミが冴えてるねぇ。」

「うっせ。」

少女は一度自室に戻ると、荷物を置いて着替えを手にしてお風呂場を目指す。
洗面所をドアに手を伸ばすと、

「あ、三郎。」

「Aさん、お待たせしました。」

「ちゃんと乾いてるね〜。」

中から三郎が出てきた。
髪もきちんと乾いていたので、少女は三郎の頭を軽く撫でるとそのままお風呂に向かった。

＿何か、お風呂って怖いんだよなぁ。
少女はシャワーを浴びながら、背後に何かがいるのではないかと想像してしまう。
どんなに振りほどこうとしても、頭からそのイメージが離れなかったので、

「よし、今日は早く上がろう。」

高速でお風呂を上がることにした。


「お、A帰ってきてたのか。」

「あ、一郎ただいま。」

お風呂から上がり、髪も適当に乾かした後少女はまたリビングにやってきた。
そこでは３兄弟がテレビを見ている。

「何見てるの〜？…ゲェ。」

少女はソファーの後ろから顔を覗かせてテレビを見る。
すると、
『お分かりいただけただろうか…。』
というテンプレ過ぎる言葉が聞こえてきた。

＿これはあれだ。怖い奴だ。

瞬時に把握した少女は、顔をしかめるとその場から離れようとする。
…がそれは無理だった。

「A〜。一緒に見ようぜ。」

一郎にしっかり腕を掴まれた少女。

＿え、マジで？
＿マジで。

少女が青ざめた顔で一郎を見ると、一郎は素敵な笑顔で頷いた。
そして、

「うわえっぐ…ひぃ！」

少女は一郎に後ろからホールドされて逃げ場を失った状態で、悲鳴を上げる。
その反応を見て、３兄弟は楽しんでいた。
…ドSだ。

＿これで左馬刻の件はチャラな。
実は意外と根に持っていた一郎君でした。


「もう無理。…一郎、一緒寝よ。」

「ははっ、仕方ねぇな。」

結局４人で寝ることになりました。

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