人間洗浄機９

日常313　奇跡のトム ページ17

＿どうして…あの人がここに。
少女は舞台袖からトムの姿を見て驚く。

その男は間違いなく、先日ヨコハマのカジノで少女がぶつかった男だったからだ。
少女はフードを持ち上げられたため顔も見られている。
恐らくヤクザの仲間ではないだろうが、何となく姿を見られたくないと思っていた。

…思っていたのだ。
トムが

「流石のFring Posseも＜シブヤの幽霊＞には敵わなかったってことかな。」

と言うまでは。

「＜シブヤの幽霊＞！？それ、どういうことですか！？」

少女はトムの発言を耳にすると、思わず舞台袖から出てって姿を現してしまった。
少女の姿を目にすると、トムも目を見開く。

＿しまったー。
少女は出て行ってから反省した。

「…！君は！？」

トムが少女を指さしながら声をかける。
＿不味い、何となくシブヤのメンバーにカジノにいたことがバレたくない。
そう判断した少女は、鬼の速さでトムに近づき、

「ヘイ！トム！ひっさしぶりじゃないの！はっはっは！
…How are you？」

とその場しのぎで声をかける。
ちなみに、＜トム＞と言う名前は日本人離れした彼の顔を見て少女がとっさに思いついた名だったのだが、奇跡的に当たっていた。

「え、おにーさん達Aの知り合い？」

「え、えーっと…。」

当然、トムはそれに戸惑う。
少女はすかさず再開の抱擁に見立ててトムに抱き着き、

「お願いします！どこのどなたかわかりませんが、前の事は言わないでください！」

トムの耳元で少女は必死に説得する。

「トム、彼女知り合い？」

緑髪の女性がトムに問いかける。
＿なんて空気の読める女性何でしょう！好き。
奇跡的に名前が当たっていただなんて夢にも思っていなかった少女はその女性を見て、感激する。
トムは何となく察したのか、

「久しぶりだな。元気だったか？えっと…A？」

「はい！」

＿後で説明してくれ。
そう目で訴えながら少女を見た。
乱数が少女の名を呼んでくれていて助かった。

「…ところでトムさん、あの〜＜シブヤの幽霊＞とは？」

少女はトムから離れながら問いかける。
そう、今の問題はトムの口留めではない。＜シブヤの幽霊＞だ。

「知らないのかい？シブヤのライブハウスを襲う幽霊だよ。」

トムは少女の問いかけにあっさりと答えた。

「私は一ミリも信じてないけど。」

緑髪の女性が呆れながら言う中で、少女は
＿ここって、＜ライブハウス＞だよね。
自分のいる場所が＜出る場所＞だと知り、震えているのだった。

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