【銀魂】ただいま、愛くるしい人よ

43 ページ44

『お待たせしました』




早く出せ、と窓の外に視線を送る




もう何度目か分からないが


再び足を組み直した




いつもは何かと話しかけたりしてくるが


さすがに空気を読んでいるのか


武市は何も言わないし聞いてもこない





同じ速度で走っている筈なのに


昨日よりも一昨日よりも遅く感じた





いつもより帰るのが早いため


道路が混んでいる気がする





早く着け、という焦燥を感じ


頬杖をついては溜息と舌打ちが口から洩れた




鎮めようと、拳に力を入れる



深く呼吸をして、頭を空っぽにしたかった





……だが、悔しいほどにAの顔が浮かんでくる




笑った顔


困った顔



怒った顔は見たことねェが



眠っているあの姿を見たのは一度だけでも


忘れることはできなかった




神威のことを突きつけたら、どんな表情を見せるだろうか




困惑、悲哀、焦心




きっと、俺の知らないAを見せてくれるだろうよ




それを見たとき、俺自身はどんな顔をするのか


見れるのはAだけだ

44→←42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す