げぇむ ページ3
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「助かった、ありがとうなお嬢ちゃん」
お嬢ちゃん、なんて近頃言われなくなった年頃なのに。
黙りながら、持っていたペットボトルを彼に差し出した。
50歳半ば程の彼は少しだけ戸惑った後、私から水を受け取り狂ったように飲み干した。
私の分が無くなったのは言わないでおく。
「何日目だ?」
無精髭を生やした彼は、不思議なことを聞く。
「…何日、目?…こんな世界にきてからの話をしてるんだったら、ついさっきですよ」
おじさんが目を見開いた。
まさか、こんな世界に何日も滞在していると言うのだろうか。
夢だ夢だと願いながら挑戦したゲーム。
出口の先に置かれていたテーブルの上には、スペードの3のカード。
「…私はこんなに想像力ないので、夢じゃないってことはわかってるんですけどね」
「…はは、お嬢ちゃん、来たばかりであんなに動いていたのか」
「おかしいですか?」
「おかしいさ、もっと慌てて、それこそ動けずに死ぬのがオチだろう」
カラカラと笑っているこの人は、私が居なけりゃ死にかけていたというのに。
「飛ばされた場所で、人が集まってると思って建物に入ったら始まってたんです。」
ほんの数時間前のことを思い浮かべて顔をしかめた。軽率な行動だった。
「…あの、貴方は何日目なんですか?」
「俺か?俺は5日目ぐらいかな。これでゲームは3つ目だ。」
絶句した。
こんなゲームを、3つも。
さっきまで私たちがいた建物の中は、血の匂いで充満しきっていることだろう。
「…こんな、人の命がいくつも…」
「俺はまだ5日目だけどな、そのうち理解してくるぜ。これが避けられない事実だってな」
「…っ」
唇を噛み締める。
「…私は、さっきまで講義を受けてたんです。終わって、それからスーパーに寄って…。」
「学生かい?」
「…大学生です」
「そうか。俺も麻雀帰りに、気づいたらここにいたなぁ。」
空になったペットボトルを握りしめながら、もう何年も前の出来事かのように話す。
「…お嬢ちゃんみたいに上手く動けなかったよ。最初のゲームは。…だけどな、本能で理解してんだよ。」
グッ、と彼の顔が近づく。
お風呂に入っていないのか、少しきつい匂いがして思わず顔を顰めた。
「げぇむに参加しなきゃ、待ってるのは“死”だ」
参加しなくても死ぬ。
負けても、死ぬ。
「…不愉快な世界ですね」
少しだけ、ほんの少しだけ。
私に対しての「罰」みたいな世界だな、と思った。
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みりん(プロフ) - はーとさん» わぁ嬉しいです( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ )! 褒め方が上手すぎて更新意欲が止まりません!笑 今後ともよろしくお願いします! (2023年1月26日 2時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - みりんさん» 本家のストーリーもありつつチシヤとのシーンがオリジナルで加えられていて最高です✨️✨無理はせずにこれからも更新お願いします🙇♂️これからも読ませていただきます^^ (2023年1月25日 17時) (レス) id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - そらのさん» 嬉しいです…!止まらなくて、気づいたらもう移行なのですが最後まで付き合ってくださるとありがたいです՞・֊・՞! 更新が捗ります🫶🏻 (2023年1月25日 4時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
そらの(プロフ) - 主様の小説本当好きです!チシヤの小説少ないのでこの作品が楽しみで仕方ないです!更新楽しみにしております! (2023年1月25日 4時) (レス) @page47 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はーとさん» 嬉しいコメントありがとうございますꈍ .̮ ꈍ こういうコメントのおかげで更新する気力が湧いてきます!今日も頑張りますね💪🏻( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ ) (2023年1月25日 3時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みりん | 作成日時:2023年1月18日 5時