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そろそろ帰ろうかな、とぼんやり考えたときだった
ガタン
「…え?」
ドアの方から音がして、慌てて振り返る
「さくら…さん…?」
茅「あーえっと…その…ごめん…」
そこには、少し申し訳なさそうに頬をかく、さくらさんがいた
茅「…久しぶりだね」
「…うん」
私たちは教室に戻って、少し話をすることにした
茅「…入院、してたんだね」
「…うん、色々あって」
少しだけ、私の話をした
さくらさんは、相槌を打ちながら、話を聞いてくれた
茅「…そっか、大変だったんだね
でも、Aが今日来てくれてよかった」
ちょっと安心したように微笑むさくらさん
その何の悪意もない笑顔を信じたいと思った
「…あのね、私…みんながまだ怖い
それでも、どこかでみんなを信じたいって思ってる
だから…だからね?
もう少しだけ、時間がほしい
みんなを信じられるようになりたい
みんなと一緒に話したい
みんなで先生のことを思い出したい」
頭を下げると、さくらさんはふんわりと優しく私を抱きしめた
茅「…Aが、そんな風に思ってくれてるの、すごく嬉しいなぁ…
私たちもね、話してたの
Aは今、ゆっくり、自分と向き合ってるんじゃないかって
だから、ゆっくりでいいよ
それで、ちょっと余裕ができたら、私たちと一緒に笑ってくれないかな?
それまでは、私たち、待ってるから」
さくらさんの、みんなの暖かさが心に染みて、また涙が出てきた
ギュッとさくらさんを抱きしめると、ポンポンと背中を優しく叩いてくれた
ひとしきり泣いたあと、校舎を出た
茅「ねぇ、A…
まだ、消えたいって思ってる?」
ふと足を止め、空を見上げる
そんなことを、確かに言った気がする
「…それは、多分、一生変わらないかな」
その言葉を呟いた瞬間、さくらさんの顔が歪んだ
「でもね…
それは今じゃないって思ってる」
そう、消えるのは今じゃない
先生が命を賭して与えてくれた “ 生きる課題 ”
文香さんが与えてくれた “ 無償の愛 ”
みんなが分けてくれた “ 待つ暖かさ ”
私は、まだ何も返せていない
「…だから、だからね
私、消えたくないよ
やらなきゃいけないことが、まだあるから」
まだここでやらなきゃいけないことがある
だから、私は生きていく
迷って、もがいて、あらがって
それでも私は生きたいと願う
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のあ - やばい クソみたいに面白い、、、語彙力の塊か、、、でも夢主ちゃんを好きな男子がこんなにいるとは、、甲斐くんめっちゃ好きなんだが(だれもきいてないですよ(ry (2021年4月12日 21時) (レス) id: 1efa312b7c (このIDを非表示/違反報告)
あい - 遅れたコメ失礼します‥‥。凄く感動しました。涙が止まりません‥‥! (2020年7月27日 19時) (レス) id: adcff3a35e (このIDを非表示/違反報告)
バボちゃん(プロフ) - 恭也さん» コメント、ありがとうございます!悩みながら書いた作品なので、そのように言ってもらえてとても嬉しいです! (2020年1月12日 23時) (レス) id: ca4df633c8 (このIDを非表示/違反報告)
恭也 - この小説を読んでいるとき、ずっと泣いてました。すごく感動しました! (2020年1月12日 0時) (レス) id: 734b1c5f2e (このIDを非表示/違反報告)
バボちゃん(プロフ) - りんごジュースさん» りんごジュースさん、コメントありがとうございます!そんな風に言っていただけて光栄です!すぐに目を冷やしてくださいね笑 (2020年1月4日 18時) (レス) id: ca4df633c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バボちゃん | 作成日時:2019年4月16日 15時