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多分、今僕は怒ってるんだろう。
普段なら言わないようなことまで口から溢れていく。
「儂らだって好きで天女を連れて来ているのではない!ただ、この学園に連れ込まないと更に被害が拡大するかもしれんから、仕方なくやっておるのじゃ」
「…僕がここで働くことで、なにか僕に得でもあるの?」
「衣食住は保証しよう、三食おやつ付きじゃ。事務の仕事や食堂の手伝いなどを主にしてもらう。ただ、いつ命を取られるかは分からん」
「乗った」
急に気を変えた僕に、学園長は驚きの目を向ける。
「僕甘いもの好きだから。おやつあるんならここで働く」
学園長の目が見開かれる。
「…ふ、わっはっはっはっは!儂はどうやら誤解していたようじゃ、Aよ。お主は確かに天女ではない」
天井裏の気配がまたも揺れる。
「よし!そうと決まれば、伊作!」
「はい」
天井から、さっきの茶髪の人が降りてきた。
「Aを部屋に案内してやってくれ」
「分かりました。行きましょう、天女様」
作り笑顔でこちらに手を差し伸べてくる。
僕は立ち上がりもせず、じっと彼を睨み上げた。
「ああ失礼、天人様でしたね。あまりにお美しかったものだから、男性だと分からなくて」
「さっきから誰に話しかけてるの?」
え、と小さく声を漏らし、目を見開く茶髪さん。
「ここには天女も天人もいないじゃん」
「…失礼しました。では浦霧さん、行きましょうか」
「分かった」
彼の手を取らずに立ち上がり、驚く彼の横を素通りして襖を開く。
「では学園長殿、失礼します」
ぼそ、と学園長が呟いた。
「さようならじゃ、A。明日にはもう、忍たま達の手で…」
「お生憎様、そう簡単に殺されるわけにはいかないんで」
僕は玲夜を探さなきゃならないから。
「…行きましょう」
「ん」
ぱし、と襖を閉める。
瞬間、勢いよく壁に押しつけられた。
「っ…何、」
「今回の天女様は随分と生意気な方ですね」
ぐい、と顔を近づけられる。
「このまま口吸いしてあげましょうか」
嫌悪が体に走った。
気持ち悪い。玲夜以外にそんなことされたら、舌でも噛み切って死んでやる。
迷うことなく相手の股間を蹴り上げた。
「ふざけんな気色悪い!!」
「いぎぐぁあっ!?」
すごい悲鳴をあげてぶっ倒れるそいつを一睨みし、べーっと舌を突き出す。
「案内なんかなくたって一人で行ける!」
そう意気込んで、廊下を歩き出した。
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空 - 面白いです。お互い更新頑張りましょう (9月9日 13時) (レス) id: ffd33a398f (このIDを非表示/違反報告)
夜桜ほたる(プロフ) - すごく面白いです!!!更新楽しみにしてます〜!! (8月17日 9時) (レス) id: 1600cbbb8f (このIDを非表示/違反報告)
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