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第28話 観察眼 ページ30

「この本、とっても素敵だと思わない?」



話しかけてくる彼を、
ちらりと見て、私は本に視線を戻す。



「ちょっと聞いてるの?!
あたしの話いつから無視するような子になったのかしら。」


「無視じゃないです、目だけ向けましたよね?」


「もうっ!
そんな憎たらしい顔までして!」




彼は、本の入ったカゴを軽々と持ち上げると
図書室の奥の方まで向かっていった。






暫くすると、





「ちょっとひより!
あたしの事手伝ってよ!
か弱い乙女に、何させる気?!」




「先程軽々と持ち上げていたくせに…」と
思いながら、仕事を手伝うことにした。




彼の名は、花房真尋。
高校2年生の図書委員だ。

彼は、中学時代も同じ図書委員で
ひよりをよく気にかけ、声を掛けていた。




「ちょっとひより!
あんた、そんなつまらなそうな顔して…
そんなんじゃ、素敵な出会いとか訪れないわよ?」


「先輩に言われたくないです。
私、そういうの期待しませんから。」



「もう…せめて、高等部で
友達くらい作りなさい?
きっと、楽しくなるわよ?」




最後の1冊を本棚に入れた。








「ねえ、ひより。
いま高等部で噂になっている、
秘密の交換日記って知ってる?」




先輩の言葉に、
心臓がドキリと跳ねた。




思わず伏せていた顔を上げて、
先輩の顔を見る。



「…その反応だと、知ってるみたいね。
なんでもね、この図書室で
そのやり取りが行われているみたいなのよ。」


「へえ…」


「そうねえ、んーっと…」





花房はカバンの中をあさりだし、
「あったわ!」と言って、
1冊のノートを机の上に置いた。




「…」


「ひより…この字、あんたの字じゃないの?」



花房はページを開き、
ひよりが書いたところを指さした。




花房はひよりの様子を伺う。





ひよりはただ一点を見つめ
下唇を噛み締めた。





「ふうん、やっぱりね。」



花房は日記を閉じると、
本棚に、ソレをしまった。




「……で、あんた、
あのまま日記が続いていないけど、
返事欲しいの?」



顔を俯けたまま、
視線を合わせようとしないひよりは
1度だけ、小さく、頷いた。

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作者ホームページ:なし  作成日時:2015年10月25日 21時

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