理由その37 ページ37
うちの体が強かったら…
何度そう、願ったことなんやろう
昔から体が弱かった
喘息を持っていて、すぐに過呼吸になってしまう
体が弱くて子育てがエライになりよった父と母は
まず先に離婚をした
ほんで、うちを置いて家を出ていった
うちは親に必要とされなかった
やから、こないなのことを聞いてみた
彼の気持ちを聞きたかったから
「白石くん。
うちとキスして欲しい。」
「え…どうした小鳥遊?」
白石は一瞬眉間に皺を寄せた
「…やっぱ、無理だよね。
白石くんは、うちにキスなんて。」
再び顔を俯け
小さくため息をついた
「さ、帰ろう?
門限あるから急ごう。」
立ち止まっている白石に声をかけて
歩き出した
大通りの交差点は
やけに静かで、車しか通っていない
小鳥遊…
なんであないなこと頼んだんだよ。
俺は心の底で
こう思っとった
適当な態度を取っていれば
お前はいつか離れていってくれるやろ?
こないな適当な人、すぐに飽きてくれるやろ?
でもお前は俺を好きでいた
バカみたいに真っ直ぐで、俺を見とった
そのバカ正直なトコも
そろそろ切れる頃やろう
俺と別れるのも、時間の問題
信号の先の遠くを見つめる
となりの白石はぼーっと向こう側を見ている
「…ねえ白石くん。
うちは今日、白石くんと会うの楽しみやったけど
白石くんはほんまはどうやった?」
「ああ。」
「今日はさらさらな音話せなかったし、
ホンマ話したかったんだよね?」
「ああ。」
信号が青になる
「…今でもホンマは、
うちの事、好きやないんだよね?」
「ああ。」
「ホンマは奈央の事が好きで、
うちは隣にいたらダメ…なんだよね?」
「ああ。」
「白石くん、
うちら別れようわ。」
「ああ。」
そこでぴたりと足が止まる
自分は今、何に返事をした?
振り向くと、悠は立ち止まっていて、
信号を渡っていない
「うちな…どないなに白石くんが振り向いてくれなくても、
いつか振り向いてくれるまで、ずっと待ってようと思ってた。」
信号が点滅し始め、
カラスが一声鳴いて、飛び立つ
「白石くんは優しいから、
絶対に本音を言ってくれへんと思ってた。
やから…やから聞けてよかったよ。」
目には涙を溜めて
精一杯の笑顔で
「ありがとうわ。
ほなさいなら。」
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年7月10日 23時