理由その21 ページ21
謙也は頭を掻きながら、
「なんや」と言って悠のそばまで歩く
「応援に来たのは本当やったんやな。」
「あ、ホンマにおったわ白石くん。」
かなり後ろから奈央は走ってきた
息を切らしながら、髪を整える
「今日全国大会って聞いたから
応援しに来たんや。」
「あ、ああ…おおきに。」
照れくさそうに笑う白石
そんな白石を、悲しそうに見つめる視線
「……蔵、先行っとるで!」
「あ、うちもいく!」
先に行く二人を見つめる白石
悠は謙也の腕に自分の腕を絡ませ
楽しそうに笑っている
なんや…
胸糞悪いな、今日は
「白石くん、はよ行かんとあかんのやろ?」
「あ、そうやな!」
試合に集中せなあかん
次は準決勝なんやで?
その言葉を自分に言い聞かせ
気合いを入れ直す
ていうかなんで俺
小鳥遊の事気にしてるんやろ
最近、本当に変や
「はぁっ……はぁっ……」
目の前が歪んで見える
どないしよう……うち
また貧血…………
「悠?」
「あ、ど、なんなん?」
「準決勝始まるんやから
移動するで?」
差し出された手を掴んで
階段からゆっくりと下りる
しかし、
反対側からも手を引かれて
バランスを崩す
謙也はその相手を見ると
目を見開いた
「………なんや蔵。」
「……あ。」
謙也に声を掛けられ
慌てて手を離した
「な、なんでもないで。」
「白石…くん?」
荷物を肩にかけ直して
二人よりも先にテニスコートを出て行った
「……どうしたんだろう。
白石くん。」
左手に残った熱が
まだ、暖かい
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年7月10日 23時