【A3!】天才ちゃんの化けの皮。2nd

#59 ページ13

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Chigasaki side.







『茅ヶ崎さん。』





「んー？」







夕飯のあと、風呂に入る時間までゲームをして時間を潰す。
すると、由井さんが声をかけてきた。
ちゃんとワンステージ終わったところを見極めて、俺の気が抜けた瞬間を狙って話しかけてくるあたり由井さんはほんとできたコだと思う。






ってか、由井さんから話しかけてくるなんて珍しい。








『大人な恋愛って…どんなかんじですか？』





「は？？？？」







突拍子も無い問いかけに、咄嗟に変な声が出てしまった。
いやー、俺情けなー。








「え、どうしたの？」





『…いや、今度THRIVEっていうアイドルグループのMVの仕事があるんですけど…。


その曲のコンセプトが、とある男性が男遊びの激しい魔性の女性に本気で恋をしてしまって、それを分かっているけど愛することをやめられない…みたいな感じで。


私はその女性役なんですけど、どうもどれだけ練習しても良い感じにならなくて…。』






「…マジか。」







由井さんの表情は至極真面目で、悪ふざけでは無いことは明らか。
いや…そもそもなんでそんな20代中盤くらいの女の役が由井さんにオファー回ってきたの？！
この子まだリアルJKじゃん。






つか、俺対して恋愛経験ないんだけど。








「…なんか、むずい役回ってきたっぽいね。」





『…一応向こう側は、"Aちゃんみたいな可愛い顔の子がこんな女性だったら興奮する"みたいなこと言ってたんですけど…。


多分、アイドルを誑かす役なんてやってくれる女優がいかなったか、私アンチあんまりいないので…それのどっちかなんですよね。
こんなのやったら確実にファンに叩かれるので。』







由井さんが呆れ顔で台本を見つめる。
…正直、向こうが言ってることもすごいわかるけど。







『で、リアル大人の茅ヶ崎さんにお話を伺いたかったんですけど…あんまりですか？』






「そだね。…俺一応会社ではモテるけど、そーゆーのだるいって思うタイプだし。
なんかごめんね？」







俺が謝ると、由井さんは手をパタパタ振りながら微笑んだ。






『全然！大丈夫ですよ！…こっちこそすみません、なんだか…。
取り敢えず自分で頑張ってみますね！』








つくづく、由井さんの純真さには涙が溢れそうになる。
…そして俺は、この時ちゃんと自分が由井さんの相手をするべきだったと、ひどく後悔することになる。








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