アバンティーズと恋する日々

〇エイジ : 帰り道 ページ2

▽




『ん』


「え、ほんとに買ってくれたの？」


『負けたもん』



放課後の小テストの点数が悪かった方が
帰り道にアイスを奢る約束だった。

負けず嫌いなえいちゃんが珍しい。



「昨日勉強しなかったの？」


『寝ちゃったんだよ』



眠そうに目を擦りながらガリガリくんを
かじるえいちゃん。



『食べないの？溶けるよ』

「あ、」



その瞬間、えいちゃんの手が私の手に重なり、
溶け落ちそうなソフトクリームの端を舐め取られた。



「危な〜、もったいないことするとこだった」

『あのさー』

「なにー？」



少なくなったソフトクリームを見つめながら
えいちゃんの問いに答えると、



『んーと、やっぱいーや！』



思いっきりガリガリくんを頬張ったえいちゃん。
眉間にシワを寄せ、痛そうに頭を抱える。



「ちょっと！気になるじゃん！ねーえ」



不意にえいちゃんの手を握ると、
はあ、とひとつ溜め息が聞こえた。



『付き合って、俺と』

『ほとんど食べちゃうと思うけど、アイス毎日
奢るから』



それだけを言い残せば背を向けて歩き始める
えいちゃん。...ずるい。



「じゃあえいちゃんのも食べちゃうもん！」



駆け寄って後ろから抱き着くと、
えいちゃんの吃驚した表情が頭に浮かんだ。



『ふ、食べてみろよ』



くるりと振り向いたえいちゃんは顔を見せてくれる余裕も見せずに、私にキスをした。



甘いソフトクリームの匂いと、
変わらないえいちゃんの柔軟剤の匂い。



「えいちゃんのばーか」

『それはAの方』




二人肩を並べて帰った。


実は照れてばかりの、不格好なカップルの完成。




△

〇そらちぃ : 一目惚れ→←はじめまして

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す