幾時の針・別時の物語Ⅱ (ページ37)

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時・37【　T　】ページ37

掃除ができないって言ってたけど…

ん～、別に汚いわけじゃない。ただ、アクセサリーの材料が多いだけ。

これらをどうやって使うものなのかさっぱりわからないけど…

ここは、岬の城なんだと思う。さしずめ夢の城かな？

「そっかぁ… ここで俺のピアスは出来たんだ」

「ありがと、大事にするね」

一生懸命作ってくれたんだなと思うと嬉しくなる。

素直にお礼を言いたくなった。

「… やっぱり意地悪だ」

「え？どこが？」

なぜ？

「… 言えるわけないじゃん… ずるいよ」

「何なの、玉森さんって… 」

何なのと言われても…

俺は、俺だし。素直になってるだけ。

「そんなに、困る？」

「困る」

困るかぁ…

ん～、どうしようかな…

「そんなに嫌？」

「そうじゃない、… 戸惑ってるの！」

困る＝戸惑ってる

なるほど… (・_・D ﾌﾑﾌﾑ

「タレントさんは、そういう風に見ちゃいけないんだよ… 」

「業界の暗黙のルールなんだよ… 、それなのに… 」

そういうのあるよな…

ジャニほどは厳しいわけじゃないと思うけど、そういう営利目的を禁止してる会社はある。

「グイグイきてさ… 」

「わかんなくなっちゃう… ずずっ… 」

あ、やば、泣いちゃったかも…

「ごめん、泣くなって… 」

「Aちゃんのことだってあるしさ… っく… 」

…

「間違えるくせに… 」

「間違えないよ」

間違えない。

「確かにびっくりしたよ、同じ名前だって知った時は」

「戸惑ったよ、でもさ… 俺、少し嬉しかった」

こんなこと言ったら嫌かもしれない。

でも、嘘はつきたくない。

「何よ… それ… やっぱり Aちゃんが好きなんじゃん！」

「違う」

理解してもらえないかもしれない…

こんな幼稚な想い。

「そうじゃなくて… その… 俺だけのAがいたって、嬉しかったんだ」

「え… ？」

Aちゃんを好きになってその名を呼びたかった。

ガヤみたいに…

― 『 A 』 ―

「呼び捨てできるのは、特別な特権」

「でも、俺が呼びたいのは、もう Aちゃんじゃない」

同じ名だけど、同じじゃない。

「岬 Aの名を俺は、呼びたいんだ」

「だから間違うわけない」

俺が呼ぶのは、君。

今は、まだダメだとわかってる。

でも、いつか特別な特権を許してほしい。

これが今の俺のささやかな願いだ。