時・16【 T 】 ページ16
もう一度ため息をつくとカバンをゴソゴソしだした。
取り出したのは… 夏のマストアイテム。
バサッ…
「はい、日焼けしちゃいますから」
「いや、大丈夫… 」
うっ…
めちゃくちゃ目で訴えてる… 『 あなたは、アイドルでしょう！？ 』って(-_-;)ｺﾜｲ…
ここは、言うことを聞いておこう。素直に日傘を受け取った。
「じゃあ、一緒に… 」
「入りません」
うっ…
なんか、すごく怖〜い！
「申し訳ございません」
「え？」
え？え？
「何で謝るの？」
「ご期待には添えないので」
ご期待って…
「そんな重く感じなくても」
「軽いんですか？」
うっ…
「お前、なんか意地悪くない？」
「玉森さんがそうさせてるんです」
…
「俺が嫌い？」
「嫌いとか好きじゃないです。そもそも そういう目で見てないって言ってるんです」
なるほど… なんとなくそんな感じだとは思ったけど…
あくまで仕事仲間だったってことか。
「今からは？見れない？俺のこと」
「… 」
…
「Aちゃんは？」
「もういいんですか？」
頷きながら前へ一歩、日傘を差し出した。
お互い半分ずつ日蔭。岬は拒否しなかった。
「彼女は、ガヤの奥さんだよ」
「… 」
そう言い、にっこり笑った。
「… 俺ね、彼女以外で興味を持ったのは、岬だけだよ」
「全然、タイプが違うのにね」
Aちゃんとは、１８０度真逆。
姿形も。今まで好きになった女の子たちとも違う。
でも、好きになれば、タイプなんて関係ないのかもしれない。
「優しさも違う。岬のは、隠れた優しさ」
「俺は、その隠れた優しさが好きなんだ」
見えないように守ってくれてる。
「な、何言ってるんですか… 私は、優しくなんか… 」
「優しいよ」
すごく。
「… 正直言うとさ、俺、認めたくなかったんだ、お前のこと」
「彼女のことが すごく好きだったから… 」
君を好きだと言う事実を認めたくなかった。
「でも、昨日 現場が終わって お前ともう会えなくなるんだって考えたら… 」
「嫌だと思った。物凄く嫌だったんだ、俺」
― 『 正直に。素直に 』 ―
「今すぐ彼女になってとは、言わない」
「でも、その部類に考えてくれないか？」
もう 認めよう。
俺、岬が好き。
Aちゃんほどの情熱は まだないけど…
でも、そうなる予感はするんだ。
だって…
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作者名：亀猫
| 作成日時：2022年6月22日 10時
