幾時の針・消えない物語【 ３ 】

太輔パパの時日記・7 ページ43

◆ 太輔・side ◆

一見、道路から見ると平屋。


でも、海側から見れば二階建て構造(崖を削り建てた)


店舗は、まだ完成してないが皆で住む家は、ほぼ完成しつつあった。



「すげぇ 二世帯住宅… 」


「これ、俺ん家？マジ？」



久しぶりに会った拓斗。


すいぶん大人っぽくなったものだ。



「あ、渡り廊下で行けるんだ」


「ジブリの地球屋みたい、オシャレ〜… 」



Aの希望でヨーロッパの片田舎風の建物。


森のお菓子屋さんにしたいらしい。



「俺、ほぼ出してないのにいいの？」


「ローンあるから(￣ー￣)ﾆﾔﾘ… 」



これは、嘘。


実は、全部支払い済。


でも、そう言ってしまうと拓斗の甘んじる可能性があるとAとお義母さんが懸念。


月々支払いがあることにした。



「通えそう？」


「大丈夫。会社、リモートだから。週に２日行けばいい」



嬉しそうに吉田家を探検。



「こんなに部屋があるんだ、すげぇ… 」


「拓斗のお嫁さんと子供の予定も入れとかないとな(￣ー￣)ﾆﾔﾘ… 」



おっ、急に真っ赤になった(*^▽^*)ｸｽｸｽ



「何… ねぇちゃんから聞いたわけ？」


「いや、最近 弁当ねだらないからさ」



前はいろいろ持って行ったから。


それが数か月前から その連絡がなくなった。



「いい子？」


「うん、優しい。世話してくれるし」



うん…



「東京の女って怖いなって思ってたけど、違うんだなって… 」


「キラキラしてない子もいた」



キラキラ？？



「それが返って安心した」


「そっか、普通なんだ」



柔らかい笑顔で頷く拓斗。



「ホント、平凡だよ」


「藤ヶ谷の世界とは真逆。でも、俺には それがいい」



チラリと写真を見せてくれた。


そこには、お世辞でも綺麗というわけじゃない普通の女の子が笑っていた。



「いつか紹介してくれる？」


「藤ヶ谷なんかに会ったら 卒倒するかも」



あはは…



「でも、そうなるかわからないけど 努力しようと思ってます」


「なので、これからもよろしくお願いします」



本当に大人なったな…



「蒼、お兄ちゃんの恋を応援してあげようね」


「あぅ〜… 」



小さな手に力をもらい 前に歩き出す。




数年後、AのD工房に その彼女が働くことに。




でも、その話は また違う物語。




今は、俺の物語。




息子・蒼との子育て日記。




でも、その物語に もう一人加わることが この数ヶ月後わかった。

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