幾時の針・消えない物語【 ３ 】

太輔パパの時日記・2 ページ38

◆ 太輔・side ◆

藤ヶ谷 蒼(あお)


名付けの由来は、俺の父(字は、夫婦で決めた)




― 『 海のような壮大な男になってほしい 』 ―




父がぼそりと呟いたことをAは心に止めていた。


そして この名を思いつく…




― 『 海って… 青空を映してて綺麗だよね 』 ―




D工房の土地探しの際、いろいろな場所へと赴いた。


そんな中、想定してなかった物件をAが気に入った。




― 『 ここ、この子の場所かも… 』 ―




最初 何を言ってるのか わからなかった…


でも、何度もその場所を訪れるたび 俺もわかるようになった。


この場所は、その壮大な海を見渡せたからだ。


将来、蒼が学校に行くのには不便な場所(山の中腹。眼下に湾)


でも、Aは なんら気にしてない。それは、なぜか…




― 『 だって どうせ 送り迎えするんでしょう？ 』 ―




近い距離でもしようと思ってたことを見事見抜いていた。


どうやら 亡くなった親父さんもそうだったらしい。



「でも、蒼は男の子だから あまり過保護はダメだよ」


「親離れも子離れもできなくなるからね」



まだ生後３ヶ月だと言うのに釘を刺された。


でも、その通り…



「蒼〜… パパ、心配なだけなんだけど… 」


「ぁ〜… ぅ〜… ？」



まだまだ首の座らない我が子。


小さな手は、力なくだけどちゃんと握ってくれる。



「ありがと」


「え？」



感謝してもしきれない…



「蒼を生んでくれて」


「それ、もう何度も聞いた」



うん…



「太輔の一番の宝物だね」


「それは違うかな？俺の一番は、お前だし」



Aが一番の宝物。


何年経っても 想いは変わらない。



「え〜？蒼じゃないの？」


「蒼はいずれ離れていく… でも、お前はいる」



絶対に離れはしない。



「死が分かつまで一緒だもんね(*^▽^*)」


「ああ。死が分かつまでな」



挙式で誓った。



「蒼は、どんな大人になるかな？」


「モテモテ君だよ」



モテモテかぁ…



「ママは、ヤキモチだね」


「パパにしか妬きません」



クスクス笑い、キス。



「大好きだよ、ママ」


「愛してるよ、太輔」



くすっ…



「愛してるよ、A」


「大好きだよ、パパ」



今日も３人で笑い合う。




でも、子育てとは 戦い。




まだまだ言葉が通じない我が子に苦戦連発。




新米パパの子育て。




それを見習う者がこの日やって来た。

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