幾時の針・消えない物語【 ３ 】

時・131 ページ33

太輔… 無理してる…




― 『 してないよ。ただ、お前を幸せにしたいだけ 』 ―




その言葉に噓偽りはないと思う。


でも、その想いにがんじがらめになっている気がして しょうがない。


私が鬱になり、きっと… 太輔も心が痛んだんだと思う。


だからこそ、絶対に幸せにならないと… 幸せにしないといけないと思ったかもしれない。


私だって幸せにしたい…




ギュッ…




「… よし」



… パタン。



…



…



…




コンコン。



「A？」



あ…



「A、大丈夫か？」



どうしよう…



どうしたら いいの？



「藤ヶ谷、どうした？」


「いや、返事なくて… 」



皆に心配かけてる…


また 心配かけちゃう…



コンコン…



「A、だいじょ… 」


「藤ヶ谷」



…



「Aちゃん、気にしなくていい」


「出ておいで」



中居さん…



…




…




カチャ…




「A… 」


「ごめんなさい… 」



恐る恐る手を出した…



太輔の顔が見れない…



…



…




「え？」


「ん？」



…



…



…



「えっと… 何？使い方 わからなかったとか？」


「いや、そうじゃなくて… 」



その…



う、うっ… 言いづらい…



皆の視線が痛い… (とくに太輔… )



「あ、… はいはい」


「中居さん？」



あ、気付いてくれたんでしょうか…


中居さんが優しく頷いた。



「藤ヶ谷、お前 ホントバカだな」


「え！？何で！？」



相変わらず、辛口…


でも それは…



「嫁のことくらい わかれよなぁ〜、まったく」


「え？え！？」



太輔は、私と中居さんを交互に見てはオロオロ。


プチパニック状態。



「Aちゃん、今日は あったかくして寝るんだよ」


「はい、ありがとうございます」



ポンポンと二度頭を撫でると俊君たちと帰って行った。


一気に静かになった部屋。


太輔は、不安そうな顔で見つめていた。



「ごめんなさい」


「… 」



…



…



…



「… 出来てなかった？」


「うん。検査しようと… そしたら… 来てて」



…



…



「コロナで… 遅れてたみたい」


「… 」



お腹が痛い…


身体が重い…


それより もっと胸が痛い。



「ごめんね… 」


「いや… 俺こそ… 」



嬉しそうだったのに…



パパになりたかったよね…



「本当に ごめ… 」



スッ…




…



「え？」


「痛いか？」




太輔…




…




…

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