幾時の針・消えない物語【 ３ 】

時・102 ページ4

◆ 太輔・side ◆

愚痴りたくはないが、本音をポロリ…



大倉君は、その愚痴を静かに聞いてくれた。



「忙しいのはええけど、しんどいよなぁ」


「うん… 」



それで身体壊した大倉君。



「宏光も同じことで愚痴っとたわ」


「『 俺ら何処に向かってんのか… 』って」



北山もか…



「あがく時なんやと思うけど、しんどいねん」


「でも、よこーさんは、相変わらずなんやろ？」



渉は…



「吹っ切れてるから、渉は」


「よこーさんぐらいにならんとな」



うん…



そよそよと吹く心地よい夏の風。


のんびり二人で青空を眺めた。



「ﾌﾌｯ… 」


「ん？何？」



急に笑い出した大倉君。


俺をチラリと見ては 笑っていた。



「何でヒゲなんかなぁ？って 剛の真似か？」


「違う。ちょっといろいろあって」



キスマイ打破もあるけど、一番は仕事の為。



「Aちゃんは、なんて？」


「Aは… 何にも言ってこない」



感想なし…



「似合わん」


「よく言われる」



けちょんけちょん(-_-;)ﾌｩ…



「ま、そのうち見慣れるんちゃう？」


「そのギクシャクも打破も」



え…



「結局、時間なんや」


「俺の病気もさ」



うん…



「でもな、未来を見なあかん」


「Aちゃんにも未来を見せんと」



未来…



「さて、そろそろ お偉いさんと話してくるわ」


「あ〜あ、面倒くさいわ〜 」



大倉君は、大きく背伸びをした。



「じゃあな」


「大倉君！」



クルリと振り返った…



「何？」


「未来って？」



何？



「夢や」



夢？



「藤ヶ谷君の夢は？」


「え… ？」



…



「Aちゃんの夢は？」


「何？」



俺の夢？



「ほなな、またな〜 」


「あ… 」



大倉君は、ガラス扉を開け 中庭から去った。


ポツンと残され、再び夏の空を眺めた。



「そう言えば、夢は聞いたことがなかったな… 」


「Aの夢ってなんだろうか… 」



そして 俺の夢は… ？



…



…




「夢？ん〜？とくにないけど、俺」


「え？玉 ないの？俺はあるよ！声優界進出！本格声優目指したい！」



さすが俊君、すげぇ夢をお持ちだ。


玉は、相変わらずのらりくらり。それでいいのか？(-_-;)ｳｰﾑ…



「わたは？」


「俺は、普通のオジサンになりたい」



え？



「オジサン！？」



意外な夢の渉。




でも、その夢は、未来を見据えたものだった。

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