幾時の針・消えない物語【 ３ 】

時・121 ページ23

いつものキス。



愛されてるキス。



「結婚は別として、投資は、すぐってことじゃないんだ。徐々にだ」


「え？」



どういうこと？



「沖縄発言は、嫌でも憶えてるよな？」


「うん… 」



胸が痛い。


申し訳なくて 太輔の顔を見ることができない。



「じゃあ、中居さんの家で言ったことも憶えてる？」


「何？」



何のこと？



「場所なんか どこでもいいって言ったこと」


「うん… 」




― 『 場所なんか どこでもよかったんだ 』 ―




「本当にどこでもいいんだ、Aと幸せになれれば」


「でも、ふと思った… Aの幸せってなんだろうって」



私の幸せ？



「そんなの… 太輔といられれば… 」


「うん、それも幸せだね。でも、充実的な幸せは？」



充実的？



「今、内面的な幸せはあげられてると思ってる」


「でも、充実的は？俺以外で充実感を得てることは？」



太輔以外で…



充実感… それは…



「D工房」


「あの時、A、すごく幸せだったんじゃない？」



ドキッ…



「D工房は、お前にとって 大切だったんじゃない？」


「… 」



…



「俺は、Aにもう一度 D工房をやってほしいんだ」


「何年かかってもいい、充実的な幸せを見つけてほしいんだ」



私の幸せ…



「Aがね、本当に嫌ならしょうがない、でも 少しでもその想いがあるなら、その手助けをしたい」


「だから 投資と言ったんだ」



この人は、何でこんなに…


いつもいつも私のことを考えて…


それなのに疑って… 私は、なんてバカなの… (;_:)ｼｭﾝ…



「嫌かな？この提案」



嫌だなんて…



「出来ればやってほしいな、俺 Aのお菓子大好きだからさ」


「幸せの味を皆に知ってほしいんだ」



幸せの味…


子供の頃から お母さんが作ってくれた。


それを食べるたびに幸せを感じた。


それをもう一度… そんな幸せな提案…



「迷惑… かかっちゃうよ… 」


「俺の方が迷惑かけちゃうかもよ、だって 俺、アイドル以外無能だし」



無能だなんて…




こんな多彩な才能の持ち主いないよ。




私は、もっとこの人を見習わなければならない。




人を幸せにすること。




本当に出来るかわからないけど、この人の期待に応えたい。




太輔に幸せの味をずっと感じてもらいたい。

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