幾時の針・消えない物語【 ３ 】

時・113 ページ15

私のせいで 太輔を危険にさらしてしまった。


杉野さんたちディーラーにも迷惑を掛けしてしまった。


このスタンプを押したばかりに…



「D工房… ディーラー工房… 」



実は、このスタンプ、杉野さんが作ってくれたもの。


ディラーでお菓子を出す際、食品衛生責任者と防炎管理者の資格が必要。それを取得した時、お祝いでくれたの。


私にとっては、運転免許証以外の初めての資格だった。



「金子様、憶えていてくださったんだ… 」


「嬉しい」



でも、やはり 悲しい。


せっかく 喜んでもらえてたと思ったのに…



「もう… 作らない」


「しまう」



辛かったけど、皆を危険に晒すことはダメ。


たかがお菓子。私が作らなくったって 世の中にはたくさんある。


そうよ、私じゃなければならないなんて、ないんだから。



「よし！切り替え切り替え！」


「頑張るぞ！！」



そう思っていたのに…


心は なぜか頑張れず。ため息だけが増えてしまっていた。



「もう お菓子作らないのか？」


「ん〜、なんか飽きちゃって もういいかな」



なんて嘘。


本当は、テレビで見かけるたび、作ってみたくなっていた。



「あの噂、消えてはいないけど もうほとんどないから いいんだぞ」


「ううん、迷惑かけたくないし、いいの」



もう やめて…


その話しないで…



「でも… 」


「もういいの！！」



はっ！！



「ご、ごめんなさい。でも、本当にいいの」


「あ！私、お洗濯するね」



バカバカ！！


太輔に当たってどうするのよ！！


太輔は、何も悪くないのに(:_;)ｺﾞﾒﾝ…


逃げるよう脱衣所に駈け込んだ。


それから 太輔は、お菓子について 何も言わなくなった。


あれから１週間…



「A、ちょっといい？」


「ん？何？」



何かな？



「いいから、いいから(*^▽^*)」


「うん？」



ニコニコご機嫌の太輔。



「ねぇ、夢の宿題 憶えてる？」


「え… ？(ﾟДﾟ;)ｴｯ！？」



夢の宿題！！？


あったわね、そんな話…



「あ〜、その顔は、完全に忘れてたな〜 」


「うん、ごめんなさい、すっかり忘れてた」



ごめーん(;^ω^)ｱﾊﾊ…



「もう、しょうがないなぁ、Aは」


「じゃあ、俺の聞いてくれる？」



え？



「俺の夢！」



太輔の夢？




いきなり言い出した夢。




でも、それは 今までの出来事を払拭させるほどの夢だった。

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