感情 ページ5
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「俺が、…もし、護りたいって言ったら、」
真っ直ぐな眼で、俺を見つめる。ちゃんと俺の話を聞いてくれる。今の彼女からしたら、俺なんて何処の誰かも分からない怪しい奴なのに。
「お前を、護り抜きたいって言ったら…怒るか?お前を…"普通"にしたい、って言ったら…怒るか?
こんな言い方じゃ、…今のお前がまるで普通じゃないって言ってるようなモンだけど…、
お前の好きな色の綺麗な着物を着て、洒落こんで…好物の甘味を食べて、簪さして…笑っていて欲しい、なんて言ったら…お前は、怒るか?幸せになって欲しいって…言ったら、怒るか?その腕の傷も、受けた痛みも、抱え込んだ苦しみも…全部俺が受け止めたいって言ったら…怒るか?
お前の首に繋がれた"鎖"を、断ち切りたいなんて言ったら…お前は、Aは…ッ、怒、…るかァ?」
ボロボロと、俺に似つかわしくない
「…怒ら、ない」
「!」
「でも、…何でそこまで…私の事を?そもそも、何で私の名前を…」
彼女は困惑していた。何を言ったらいいのか分からない様子だった。
「…何で、って」
それは、その感情は。
───同情?哀れみ?可哀想?なんだなんだ、そんな形だけの言葉を並べてッ!楽しいか!?そんな言葉を並べて満足したか!?"良い人"になれたか!?
違う、違う違う違う、違う、筈だ。そんなつもりじゃない。良い人になんか、俺がなれる訳ない。だが、じゃあどうして?って言われると、分からなくなる。俺が…、俺が辛いんだ。それが理由じゃダメなのだろうか。正解が分からない。そもそも正解なんてなきゃダメなのか。
「貴方は、…優しい眼をしてるね」
不意に彼女がそう呟いた。赤みがかった薊色の瞳が、静かに揺らいだ。
「…俺が?」
そう言うと彼女はコクリと頷く。俺が、優しい眼。そんな事、生まれてこの方言われた事が無い。今にも殺しにかかりそうな目付き。血走った目付き。目で人を殺せる。大概そんな事を言われる。自分でも分かってる、目付きが悪い事くらい。
それを、彼女は否定する。俺を優しい眼だと言う。分からねェ。
「…じゃあ、約束…ね」
「え、」
彼女の着ている、黒い袴が一瞬左右に揺れた。
風だ。俺の、風だ。
薊の花が揺れていた。先程まで荒れ散っていた花畑が、一気に修復されていく。
「私の事、…護って…、くれるんでしょ?」
その瞳に映るのは。今まで見た事のない、安らかな笑顔だった。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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