時間 ページ36
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「アザミ」
「…ッ、何よ」
目と鼻が赤くなっているアザミを見て、思わず笑ってしまう。
「ありがとなァ」
そう言って俺は、初めてアザミに心から礼を言った。
「………は、大っ嫌い。貴方なんて大っ嫌いよ!」
「俺は好きだぜ。冨岡の上くらいだが」
「……それほぼ嫌いじゃないの!!やっぱり大っ嫌いだわッ!!!」
何でお前が冨岡の事知ってんだよ、と思いながらキー!と睨み怒っているアザミを見ていた。
「あ」
「え、てかちょっと待って」
俺とアザミが同時に言葉を発し、同時にお互いを見つめ合って、同時に手持ち時計に視線を移した。
「「時間、ヤバくね?」」
時計の針は、丁度"十"を指していた。
「「え」」
俺達二人は時計を見つめた後、お互い顔を合わせる。
「…ようこそ、
「じゃねェェエエエエ!!!!」
顔面蒼白で口元をヒクつかせながらアザミはそう俺に言った。俺は今までの声量とは比べ物にならないくらいのデカい声で叫んだのだった。
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「今日も相変わらず、ですか」
「…」
コクリと頷くだけの彼女。その姿を横目に胡蝶しのぶは溜息をつくばかりであった。目の前には点滴をつけて規則正しい呼吸音で眠っている彼──不死川実弥。気性の荒い彼が一週間以上静かに眠りについているのは今までにないくらい異常な出来事であった。怪我をしても絶対に蝶屋敷に足を運ぶ事がない彼が今こうしてこんなにも弱っているのは本当にどうしたものか。
しかも原因は不明。鬼に襲われた訳でもない。隣で顔を俯かせて不安げに身体を震わせている彼女を放置する程の良い夢でも見ているのだろうか。原因が分からないほど怖いものはない。
「Aさん」
「…」
長い前髪の隙間から赤く染った瞳が揺れた。
「不死川さんが目覚めたら、一番に何がしたいですか?」
今にも壊れて消えてしまいそうな彼女を修復する為に、彼の代わりにはならないけど繋ぎの役割くらいは果たせるだろう。少し、話でもして。
「…一番、」
「はい」
「…ずっと、伝えたかった事を…言いたいです」
小さな声だったが、しっかり胡蝶の耳には届いた。
「伝わります、きっと」
「……でも」
「でも?」
「…私……喋るの…下手だし」
彼女の声はどんどん小さくなり、最後の方は聞こえない程だった。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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