偽物 ページ27
.
「七!?」
するとアザミの持っていた時計が一気に崩れ落ち砂の様に指の間からサラサラとこぼれ落ちた。
「…私のは偽物だった、ってワケね」
アザミから溜息混じりの声が漏れた。俺はどうしたらいいか分からなかった。ただ自分の手に持っている時計を見つめる事しか出来なかった。
「…焦って喚いても時間の無駄だわ」
「おう」
「私は貴方を
「…おう」
「"十"までに全てを終わらせるわ」
そう言ってアザミは俺の手をガシッと握って走り出した。その掴んだ手は勿論包帯など巻いておらず、その腕も傷ひとつ付いていない…綺麗な女らしい腕だった。
「ちょっと手荒だけど許しなさい!」
「は?」
「"転送"────!!!」
アザミはそう叫んで、俺と繋がれていない方の手首を先程とは逆の方向へ捻った。
「ちょ、お前…!!」
真っ暗だった世界が、急速に明るくなる。
「飛んで!!」
「はァ!?」
いきなりそう命令され、アザミが飛ぶ
.
「よっA。相変わらずボコボコにされたんだなぁ」
窓からヒョイッと顔を出し、ニヤニヤと笑う少年…いや、青年の年齢にも見える。しかし彼は"鬼"である。こうして毎晩、屋敷の者が寝静まった後にこっそり屋根の上に登り彼女の部屋の窓を叩きに来る客。名を
「…………、」
今日殴られた部分を手で押さえて、フラフラな足取りでベッドから立ち上がり、窓を開ける。
「青痣、今日は右頬か!痛くねぇの?」
「…………痛い」
痛くない訳がない。尋常ではない程痛みが彼女を襲っていた。しかし彼には理解出来ない。何故なら彼は"鬼"だから。
「もう此処に通って何年経ったかなぁ。そういやA、今年で何歳になるんだ?」
「……二十」
「っつー事は、今年で七年かぁ。お前どんどん背伸びてってるな。そろそろ俺を越すんじゃねぇか?」
彼と出会った当初の身長は百五十と少しであった。それが七年たった今、彼女の身長はいつの間にか百六十五を悠に超えていた。
「…それは、ない」
彼の身長は百七十であった。流石にもうそこまで伸びる気配はないだろう。
「どうだ、A。そろそろ逃げたくなったか?
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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