感謝 ページ16
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彼女は目を見開いて、静かに状況を把握していた。あぁ、自分が殺したんだ、と。そんな小さな呟きが聞こえたと同時に、大量に零れ落ちていた涙が一気に溢れ出し声を出して泣き叫んでいた。その声は、俺が今まで聞いた事のないくらいの声量で。煙を出して消えていく母親を必死に抱き締め、消えないように、離れないようにとギュッと母親の身体を掴んでいた。
「……何も、護れなかっ…た」
違う
「わた、しは…結局…、なに、もッ……」
違う
「…ぁ、あ…人質の、…価値も…ッ、」
違う
「全て…ッ、無くなったんだぁあ"ッ!!!」
「違う!!!!!!」
どんなに叫んでも、どんなに声を荒らげても、どんなに、訴えても。
「何で…ッ!俺の声は届かねェんだッ!!!!!」
「…」
隣のアザミは黙って俺を見つめていた。その眼は、赤く、そして…色んな感情が混ざりあった様な、そんな眼だった。シュゥウと、煙を立て彼女が抱き締めていた母親は消えていった。彼女は空気になった腕を必死にかき集め、抱き締める。
「…こんな、」
そして、地面に落ちていたあの小刀を持ち、自分の腕に刺した。
「こんな血…ッ!要らないッ!!!!」
ザシュ、ザシュッ、…と、何度も何度も刺して、何度も何度も自分を傷つけた。
「何も護れない、何の意味もない、何の価値もないこんな血…ッ!こんな私…ッ!!!!」
「…もう、」
弱々しく、俺はフラフラの手を伸ばした。もう、やめてくれ。誰か、彼女を止めてくれ。お願いだ、もう俺はこれ以上見たくねェんだ。彼女の為じゃねェ…俺の為だ。だから、もう。
「やめて……くれェ…、」
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「──────おい、何してんだ?」
どこからとなく、この場に似つかわしくない程の陽気な声が響いた。彼女は手に持っていた小刀を止めた。そして、声の主へと振り向く。
「………羅刹、」
「よう、お前
あの鬼だった。俺はあの鬼の方へ顔を向け、そしてアザミの方を見た。
「…なんで、あの鬼が」
「さあ。何故羅刹が此処に来たのかは偶然に過ぎないけど…あの子の自傷行為は止めれたわよ。…羅刹に、感謝することね」
「…ッ、」
気に食わねェ。鬼に助けられるなんざ、気に食わねェ。何で此処に俺は居ねェんだよ。俺だったら…俺だったらもっと早くに駆けつけて、
─────助けて、やれたのに。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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