屋敷 ページ10
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「とにかく、彼女をこれからどうするかお館様と相談しなくてはいけませんね」
「…あァ」
胡蝶はそう言ってもう一度彼女の部屋に行きましょうと言った。俺は一つ返事をして胡蝶の後ろを歩いた。
「アイツが…Aが屋敷にいた時、壁の柱と首輪が鎖で繋がれていたんだ」
俺がそう言うと胡蝶はギョッとした様子で勢いよく俺の方へ振り向いた。
「…本気で言っているんですか?」
「本当だァ」
「…鬼が、そんな事を?」
「俺の知る限り鬼がそんな真似をするとは考えられねェ」
「…Aさんは、あの屋敷に最初からいたんですよね?」
「あァ。だが家族ではないらしい。まァそうだろうとは思っていたが」
「…」
胡蝶は言葉を失っていた。俺もだ。自分で言いながら正気か、と自問自答してしまうほどである。
「彼女は、…蝶屋敷で預かります」
「…そうだなァ」
胡蝶が何を思いその言葉を放ったのだろうか。俺には到底共感する事は出来ないが彼女を助けたいと思っている事に間違いはないはずだ。
「女が多いこの屋敷の方が、アイツも安心できるだろォ」
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「身体に異常は感じていませんか?」
部屋に戻ったら彼女は無言で飯を食っていた。良かった、とひとまず俺達は安堵した。彼女の左手の二本は骨折している為片手で食い、視線は手元の茶碗から俺たち二人へと移った。最初の死にかけの表情が、ほんの僅かだが和らいだ事が素直に嬉しかった。
胡蝶の存在にやっと慣れたのか、彼女は首を横に振って自身の体調の異常なしを伝えていた。胡蝶はそれが嬉しかったのか、いつもとは違う安心した笑みを浮かべて彼女を見つめていた。
「体調も良さそうですし、その怪我が治ったら退院できますね」
彼女の頭を撫で胡蝶は俺にそう言った。近い内にお館様の元へ連れて行けそうだ。
「俺はもう自分の屋敷に戻る。胡蝶、あとは任せる」
「わかりました、では」
俺は彼女に「じゃあな」と言ってクシャと頭を撫でて部屋を出た。彼女は俺が部屋を出るまでずっと俺を見ていた。
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不死川実弥が薊美Aのいる病室から出て行ってから、何時間経ったのだろうか。食事もとりふかふかの布団に身を包み、彼女…薊美Aは点滴が垂れているのをジッと見つめながら時間を潰していた。
何故自分は此処にいるのか、何故生きているのか、何故自分の世話をしているのか。そんな事は彼女にとってどうでもいい事でだった。そして彼女はブチッと点滴を無理やり外したのだった。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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