恐怖 ページ23
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「…すまねェ、急に…部屋に入って、」
俺は月明かりに照らされている彼女に話しかけた。少し言葉に詰まる。何故なら月を背景に座り込んでいる彼女が、驚くほど絵になっていたからだ。フルフルと首を横に振って彼女は俺を見ていた。部屋に敷いてある布団はシワひとつ付いていなかった。
「寝てねェのか?」
「…」
彼女は首を縦にも横にも振らなかった。バレたくなかったのか、しれっと俺と目を逸らす。俺は黙って縁側に行き、彼女の隣に腰掛けた。心地よい風が俺達二人の前髪をそよそよと
「眠れないのか?」
「…」
彼女は何も反応しなかった。眠れないのではないという意味だろうか、何か理由があるのだろうか。
「…一人で寝るのが嫌なのか?」
俺は恐る恐る彼女にそう聞いてみた。まるで一緒に寝てやろうか?なんて上から目線に言ってる様にに聞こえてしまう。クソ恥ずかしい。それにもし違うかったら俺が恥をかいてしまう。それもそれでクソ恥ずかしい。
「…」
彼女は無表情で首を縦に振った。「…え、」と思わず言ってしまう俺。彼女はフイッと横に顔を向いてしまった。怒らせてしまったのか。
「あ、悪い。予想外で…」
慌てて彼女に弁解を求める。横に向いた彼女はチラッと俺の方を見て今度は空を見上げた。
「……ずっ、と」
彼女が口を開いた。なんなんだ、今日は喋る日なのか。
「……ずっと眠るのが、嫌い」
「…A」
「そのまま、深い眠りにつきそうで、怖い」
「…」
「あそこに居ると、…眠れない」
あそことは何処なのだろう。きっと、最初にいた"あの屋敷"。
「気絶しないと眠れない」
「…」
「実弥は…死ぬのが怖い?」
「…お、れは…」
死ぬのが、怖いのか?鬼殺隊に入って、死ぬのが怖いと思った事は一度もない。それなりの覚悟はいるし、勿論柱になった時もいつこの生命を捨てても悔いはないつもりだった。しかし、直接、彼女の薊色の瞳を見つめながら問われると…少し躊躇ってしまった。
彼女の眼は何か能力でも持っているのか。じっと見つめるのそのまま吸い込まれそうな勢いだ。
「…死ぬのは怖くない。一番怖いのは死にたくても、死ねないこと」
彼女は目を逸らして俯きながら答えた。真夜中なのに月の明かりは凄く照らしてて、耳に掛かっていた彼女の髪はほどけ落ちて彼女の顔を隠した。
「…ッ、」
俺はなんて声をかければいいか分からなくなったのだった。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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