甘味 ページ33
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そして今現在、アホの二人に
「…冨岡、今日仕事あんのかァ?」
「ある」
冨岡も俺と同じく夜に鬼狩りの仕事だった。場所は違うらしいが。ゲンコツを静かに抑えている彼女は俺と冨岡を交互に見つめていた。昼飯も食ったし、そろそろ帰るか。
「ではまた会おう…薊美、不死川」
「俺は会いたくねェけどなァ」
無言で冨岡に手を振る彼女を横目に俺は気に食わない冨岡に背を向けて歩いた。冨岡も彼女に手をフリフリと振り、彼女はトコトコと俺の隣に追いついた。
「…美味かったかァ?」
「…」
コクリ、と頷き彼女は俺の手を握った。手を握るのが好きなのか、拒むのも何だか可哀想な気がしたから何となくそのままにしておいた。
屋敷に戻っている帰りに彼女の足が急に止まった。手を繋いでいる為俺も自動的に止まる事になってしまう。
「、!な、なんだァ?」
びっくりした俺は彼女の方に顔を向ける。すると彼女の視線は俺ではなくひとつ隣の道沿いにある
「…甘味屋?」
そう、俺も行ったことがない甘味屋があった。彼女はジーッとその店を見つめていた。
「入りたいのかァ?」
「…」
コクリコクリと何度も頷き彼女は俺を引っ張るように甘味屋へ向かっていった。
「お前甘味好きなのか?」
そう聞くと無言で何も答えなかった。いや、違うな。何か答えたそうな様子だ。
「……十年前に、食べたきり」
「はァ!?」
十年前。つまり人質となる前の話。妙に納得しちまった自分がいた。じゃあコイツは人質にされた十年間、一度も甘味を食ってないっていう事なのか。
「行くぞA。たらふく食え、奢ってやる」
甘味好きの俺からしたら考えられない。先程と立場を逆転した俺が彼女の手を引っ張り甘味屋の中へと入った。
「何食いたいんだァ」
「………」
メニュー表を手に取って彼女に見えるように机に置いた。沢山の甘味に目を輝かせている彼女。俺は思わずフッと笑みが零れた。すると彼女はチョイチョイ、と俺の袖を引っ張る。
「ん?」
俺はメニュー表を指さす彼女に視線を移すとその指先には"おしるこ"と書かれた文字があった。
「コレか?」
「…」
首を縦に振った彼女。おしるこを選ぶとは中々センスが良い。小豆は世界を救うからな。
「おしること、…おはぎ、ひとつずつ」
店の人にそう注文する。幾つになっても"おはぎ"を注文するのが恥ずかしかった。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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