昼食 ページ32
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「…あぁ。あの人質の子の」
彼女を数秒見つめ、思い出したかの様に冨岡は口を開いた。相変わらず言葉の選択と表現の仕方と空気の読み方が最低レベルな奴だ。なのに彼女はコクリと頷き、冨岡の席の前に座った。座んのかよ。
彼女が座ったから俺も嫌々ながら彼女の隣に腰を下ろした。自分と飯が食べたいのか、と盛大な勘違いをしている冨岡は一人でムフフと笑っていた。気持ち悪い奴だ。同じ定食を二つ注文し、俺は冨岡を睨んだ。
「さっさと食ってさっさと出ていきやがれ」
「む、何故だ。彼女との親睦を深めるには飯を共にした方が良いと前に話していただろう」
「今じゃねェだろ!俺達は忙しいんだよ、お前ェにかまってやれる程暇じゃねェ!」
俺はそう言ったが冨岡は頭の上に?マークを浮かべながら茶を啜っていた。くそ、彼女と同じ反応をしている冨岡が腹立つ。
隣に座って静かに茶を啜っている彼女は冨岡をただひたすら見ていた。あんまり見るんじゃない、冨岡が移るぞ。
「…薊美、と言ったか」
遂に冨岡が彼女に話しかけてしまった。やめろ、変な事を聞いた瞬間俺は刀抜くからな、分かってんのかこの野郎。彼女はコクリと頷く。Aも返事なんてしなくていい、空気読めない人間になるぞ。
「…」
「…」
お互い無言が続いた。なんだこの空間、今すぐ逃げ出してェ。冨岡も冨岡で彼女の名前を言ったはいいものの特に話す事がないからとりあえず黙っていた。彼女も彼女で自分の名前が呼ばれたから頷いたものの喋る気がないからとりあえず黙っていた。
「…〜〜ッ!!!喋れやァァァ!!!」
同じ空気の二人にいよいよ痺れを切らした俺は机をドン!!!と叩いて店の中で叫んでしまったのだった。
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「…」
「…」
「─────テメェらのせいだかんな」
冨岡と彼女の頭の上には出来立てホヤホヤのゲンコツがひとつ。二人共痛いのか悲しいのか無言でズーーンと沈んでいた。
あの後定食二人分が俺たちの席に置かれたと同時に「店内では静かにしてください」と、こっ酷く怒られた。俺が。周りの客もヒソヒソと俺の方を見ながら喋っていて視線の限界に達した俺は急いで飯を食い、店を出ようとした。
「何をしている不死川。彼女がまだ食べているではないか」
冨岡がそう言いながら俺を引き留め彼女も口をもぐもぐさせながら俺の方を見ていた。元はと言えばテメェらのせいでこんな事に、なんて叫ぶ気力は俺には残っていなかったのだった。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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