43 ページ43
.
遂にこの試合が始まる。今回の体育祭両者トップクラスの成績である轟VS緑谷の試合が。
「Aちゃん、一緒にあっちで見んと楽しくないよ？」
「いや、いい。楽しさを求めている訳では無いから」
一人で考察しながら見たいんだ、と麗日に伝えると彼女は笑いながら「デクくんみたいやねえ」と言ってきた。私は一瞬呆気に取られたが、彼女は私の反応を面白がって無理やり腕を引っ張りながらA組が集う観客席の方に私を押し込める。するとA組の皆は目を見開き、歓迎する声と共に私は耳郎が席をひとつ開けてそこに座らされた。
隣が爆豪なのはかなり不服だが、今はそれどころではない。試合開始の合図と同時に轟は氷結を出してる。スピード勝負、そして、耐久戦。
「クソ女。クソデクの秘策は分かっとんのか」
「……限度を超える前に見つけるつもりだろうな」
爆豪が私にそう聞いてきたので、見たところの感想と考察を伝えるとまた彼は無言に戻った。きっと彼も同じ事を考えている筈だ。私の視線は緑谷出久に釘付けとなっていた。青紫色に変色したボロボロの指を凝視する。あのフルパワーの個性を使って轟の氷結の弱点を探す魂胆だろう。だがそれが間に合うのか否か。
轟が強いのは個性だけではない。判断力、応用力、機動力。全ての能力が「強い」のだ。しかしこれで終わってしまうほど緑谷は──────弱くない。
「！」
轟がトドメの氷結を出そうとした時、緑谷の壊れた右手でフルパワーを出す。もはや彼の右手の感覚は麻痺している。このまま続けるのも危険だ。後遺症が残る可能性がある。
「…見ろ、爆豪」
「あ？」
「轟の腕が震えている。右側の氷結を使い過ぎて体温が低下したんだ。アイツが自身の冷気に耐えられるのも時間の問題だろう」
「半分野郎はもう試合を終わらすつもりって事か」
「…ああ。でも、そう上手くはいかないさ」
爆豪の方に顔を向けて私はそう言った。確かにスピード勝負で轟の個性が弱体化する前に終わらすのが適策かもしれない。しかし、そう簡単に出来るとも思えない。
「緑谷なら多分…」
根っからのヒーロー気質な彼なら、心優しい彼なら、きっと轟にこう訴える筈だ。
「────
つくづく彼は
「動きが鈍い。身体に霜が降りてからだ。恐らく彼の最大は瀬呂に出した時の氷結まで。もしかしたら形勢逆転のチャンスが来るかもしれない」
「アホか。よく見ろ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 742人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麗葉 - とても面白かったです！空白があると読みやすいかなと思います！ (6月19日 14時) (
レス) id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - レオさん» コメントありがとうございます。夢主の過去は後に出てきますので暫くお待ち頂けると幸いです。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - eggちゃんさん» コメントありがとうございます。更新頻度をあげられるよう全力を尽くしますのでこれからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - のむさん» コメントありがとうございます。ファンになって頂けるなんて光栄です。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
