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ノックをして静かに中へ入る。そこに居たのは麗日と緑谷だった。キャパオーバーで救護室に運ばれた彼女だったがリカバリーガールによって回復したようだ。
「志村さん！ど、どうしてここに…」
「……忘れ物」
緑谷にそう問われて咄嗟に私は答えた。すると切島と鉄哲の腕相撲大会が決着し、二回戦目の進出者が揃ったという報告アナウンスが三人の頭上に流れる。この中で緑谷だけ出場するので、彼は控えめに挨拶をして部屋から出て行った。私と麗日は取り残される。
「あ…忘れ物って？」
麗日が声のトーンを少々下げてそう聞いて来た。私と麗日は親しい間柄ではない。基本的に人懐っこい性格の持ち主である麗日はたまに私に話しかけに来るが華麗なスルーか素っ気ない返答しか私はしなかったので、他人に対して名前呼びをよくする麗日でさえ未だに私の事を「志村さん」と呼んでいた。
私は机の上に置かれていた彼女の物であろう水玉模様のポーチを念じてふわふわと空中に浮かせた。それを見て麗日はただでさえ大きい瞳を尚一層大きく見開いてそれを見つめていた。
「え、と…」
「私はモノに直接触れられずとも浮かす事が可能だ。無論、浮かすだけでなく威力も最大に達したら破壊も出来る」
「……志村さん」
「似ていないといえばそうかもしれないが、私も最初はモノを触らないと念じられなかった。ここまで完成するのにかなりの努力をしたつもりだ。アンタが努力不足だと言いたい訳じゃない。むしろ逆だ」
空中にゆっくりと舞うポーチが麗日の頭上にポトりと置いた。そして私は彼女を見つめもう一度口を開く。
「むしろまだ伸びしろがあるよ。……
麗日が緑谷に何かしらの感情を抱いている事は察していた。私も一人の女だ。何となく分かる。だからこそ、強く生きねばならない。緑谷に憧れている彼女は、多分彼の前で泣いちゃいけないと思っているんだろう。気持ちは分からなくもない。
すると瓶の栓が抜けたように彼女の瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。オンオフの差が激しすぎて流石の私も驚く。が、そんな事も構わず麗日は私に抱き着き鼻水を啜りながら泣き始めた。ぎゅうっと力強くその両腕が私の背中にまわされて何だかむず痒い変な気持ちだ。
「ごめ…ッ、んねえ、…Aち"ゃあん…」
「……」
ヒトの体温は、こんなにも暖かいんだ。
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麗葉 - とても面白かったです！空白があると読みやすいかなと思います！ (6月19日 14時) (
レス) id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - レオさん» コメントありがとうございます。夢主の過去は後に出てきますので暫くお待ち頂けると幸いです。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - eggちゃんさん» コメントありがとうございます。更新頻度をあげられるよう全力を尽くしますのでこれからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - のむさん» コメントありがとうございます。ファンになって頂けるなんて光栄です。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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