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「じゃあ帰るか！」
「……うん」
初めてだった。切島くんの視線の先に私が映る事が。初めてだった。切島くんの隣にこうして並ぶ事が。何もかもが初めてだったのだ。
忘れもしない小学四年生のあの時、私は切島鋭児郎くんという人間に違和感を覚えた。あれから三年の時が経とうとしている。三年経った今でも、あの時の違和感は消えない。
「…初めてだね、こうやってちゃんと話すの」
「確かに、小学校が同じって言ってもあんまり話さなかったもんな」
違う。あまり話さなかったなんて生ぬるいモンじゃない。話した事がなかったんだ。私が君という存在を避けていたから。
自転車のハンドルを握り直す。汗が止まらない。頭もクラクラする。このまま自分も溶けて無くなってしまうんじゃなかってくらい、彼の隣を歩く事はハードルが高すぎた。
「……おつかい、噓なんだ」
「え？」
「だからおつかい頼まれたの、噓」
押していた自転車を止めた。目を合わさないように下を向いて出来るだけ冷たく淡々と喋った。自分はそういう人間なんだと彼に知らしめたいが為に私は自分を偽った。
「…そっか！」
「え」
まただ。またあの嫌な感覚が身体中に襲いかかる。鳥肌も立ち始めた。何で彼はまたあの笑顔で私を見るのだろう。分からない、何がしたいのか分からない。
─────いや、私が何がしたいんだ。
「…怒らないの？」
「いや別に怒らねえよ？たまには噓つきたくなる時だってあるだろ！」
「……君と帰りたくないから噓ついた、って言っても？」
「マジか！？それは気付かんかった！すまねえ！！」
あっけらかんとした表情のまま、私は彼を見つめ続けた。今私は彼にかなりの嫌味を言った。それはもう、もし自分がこんな事を言われたら二度と話しかけたくない様な気分になるくらい。それくらい失礼な態度を意図的に取った結果が、これだ。
「あ！じゃあ俺この道で帰らない方が良かったのか！？すまねえ記暦…！！次はもう帰らねえから！！」
「………え、」
言葉に詰まった。呼吸するのを一瞬忘れそうになった。本当は怒っているのだろう。そうだ、きっとそうに違いない。言葉ではそう言っているが内心私を罵倒しているんだ。何だコイツって、思っているんだ。きっと、そうだ
「……記暦？」
「…」
「記暦、大丈夫か？何で泣いてんだ？」
不安そうに私を見る切島くんがそう告げた。今、なんて。そう聞こうとしたがやめた。自分の頬に生暖かいモノが伝ったからだ。
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前頭葉爆発(プロフ) - いくまさんの作品は何度みても色褪せなくて、毎回感動しちゃいます🥺 新作も続編も見たいです（欲望）誇張表現とか無しで本当に尊敬してる1番超大大大大大好きな作者様です！！身勝手ですがファンとして応援しています！無理せず執筆活動、頑張って下さい！！！ (8月26日 5時) (
レス) id: bc670cb629 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - めちゃ面白いです！ (2022年1月8日 1時) (レス) @page14 id: 6b84f5d2ae (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 本当に綺麗な文章でした(;_;)夢主視点で進む中で、境界線ってタイトルに相応しいぐらい二人の対比を見事に表現してて圧巻、脱帽です、、いくまちゃんの文字が本当に好きッ。 (2021年10月18日 19時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 切島くんのお話書いてくれてありがとう！いくまちゃんらしい作風というか、ベタな恋愛ものではないんだけど夢主の中にはずっと切島の存在があるっていうのがなんかすごい好きだった。最後の弔くん出てきた所で色んな意味で心臓ヒュってなりました。 (2021年10月18日 13時) (レス) @page23 id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 初のヒロアカ夢とっても面白かったです！涙のシーン、挫折のシーン沢山の伏線が一気に最終章で回収されて鳥肌が今も止まりません！境界線のタイトルもとてもセンスがあって良かったです！次回作待ってます‼️ (2021年10月18日 0時) (レス) @page22 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
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