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「あと、
「え…あ、名前…」
「あれ！？
「いや……そうだけど」
目を見開いた。彼は私の名前を知っていたのだ。「良かった、焦るだろ！」なんて、切島くんはまたあの笑顔で答えているが。そんな言葉さえも私の頭には入らない。今まで一度も面識なく勝手に存在を知っているだけの関係だと思っていたのがとんだ手違いだった。
「…よく知ってたね、私の名前」
「何言ってんだよ、小学校同じだろ？」
「そうだけど」
当たり障りのない返答をする。小学校同じだから全員の名前を覚えているものなのか。うちの学校はひと学年に三百人は軽く居た筈だ。普通覚えれる訳ないだろう。ましてや私みたいなモブが切島くんの視界に入った覚えもない。君みたいに目立つ人間じゃないのだ、私は。
しかし切島くんの言葉に嫌味はひとつも感じられない。そこがまた私を嫌にさせる。なのに君という人間はどうにも憎めない。憎みたいのに、その笑顔を見ると全て消されてしまう。私を惨めにさせる。
「部活帰りか？アイスいいな！」
ニカッと鋭い牙を見せて笑う彼。友達と楽しそうに話し、私は無言でアイスを喰らう。バキバキに砕けたチョコレートの甘さが口いっぱいに拡がって気持ち悪い。
「じゃあ私、こっちだから」
別に此処を曲がらなくても家に着く。何なら今此処で曲がれば少し遠回りになる。だが、何となく今の状況から脱却したい気持ちに駆られて友達と切島くんにそう嘘をついた。別に悪い事をしたつもりはない。
「あれ、いつもAこっちじゃん」
「…今日親におつかい頼まれてて」
「あーそっかそっか。じゃあまた明日ね〜」
勿論、おつかいなんて頼まれていない。今日の夕飯は朝からカレーにすると母親が意気込んでいた。きっと今頃、家で煮込んでいるに違いない。隠し味に何を入れたか夜ご飯の時に聞いてくるだろう。多分、りんごかチョコレート。そう思いながら二人に背を向けたその時。
「あ！俺も今日こっちだったわ！」
「……は？」
「すまねえ山田、俺記暦と道同じだからまた明日！」
「えー切島もそっちなのーまあいいけどー」
ブーイングをする友人と頭を下げて謝る切島くん。そして何が何だか状況把握が出来ていない私。
「じゃあまた明日ねー！」
「おう！」
そんな二人の会話を見つめながら自転車を持ち直した。このまま彼を置いて爆速で漕いでしまおうか、なんて思ったくらいだ。
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前頭葉爆発(プロフ) - いくまさんの作品は何度みても色褪せなくて、毎回感動しちゃいます🥺 新作も続編も見たいです（欲望）誇張表現とか無しで本当に尊敬してる1番超大大大大大好きな作者様です！！身勝手ですがファンとして応援しています！無理せず執筆活動、頑張って下さい！！！ (8月26日 5時) (
レス) id: bc670cb629 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - めちゃ面白いです！ (2022年1月8日 1時) (レス) @page14 id: 6b84f5d2ae (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 本当に綺麗な文章でした(;_;)夢主視点で進む中で、境界線ってタイトルに相応しいぐらい二人の対比を見事に表現してて圧巻、脱帽です、、いくまちゃんの文字が本当に好きッ。 (2021年10月18日 19時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 切島くんのお話書いてくれてありがとう！いくまちゃんらしい作風というか、ベタな恋愛ものではないんだけど夢主の中にはずっと切島の存在があるっていうのがなんかすごい好きだった。最後の弔くん出てきた所で色んな意味で心臓ヒュってなりました。 (2021年10月18日 13時) (レス) @page23 id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 初のヒロアカ夢とっても面白かったです！涙のシーン、挫折のシーン沢山の伏線が一気に最終章で回収されて鳥肌が今も止まりません！境界線のタイトルもとてもセンスがあって良かったです！次回作待ってます‼️ (2021年10月18日 0時) (レス) @page22 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
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