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 教室に入り、一限目の教科書をペラペラと捲る。基本的な内容を理解した後、私は教室を出て御手洗に向かった。
 手を洗いながら、ふと鏡越しに映る自分を見つめた。目にかかるくらいの前髪。コテで緩く巻いた胸くらいに伸ばした黒髪の毛先にはシトラスミントのオイルを付けた。トーンアップ系の日焼け止めも塗っているし、ビューラーでまつ毛もあげている。ほんのりオレンジ色の色つきリップクリームもポケットに常備してある。制服にシワやシミなど、勿論ない。

「…よし」

 自分自身に行くぞと言い聞かせて御手洗を出た。そして廊下を一人で歩きながら彼がいつ登校して来るか考えていると不意に教室から複数の男子生徒が飛び出し、私とぶつかってしまった。見るからにアレはアメフト部だ。痛い。
 体格の差を見せつけられるかの様に私の身体は後ろへ倒れこんだ。このままでは硬い床に盛大に尻餅をついて大怪我をするだろう。こういう時はお腹あたりに力をこめていれば良いらしい。ソースは私。

「……ッ!」
「…ぶねェ」

 余りの一瞬の出来事に、私は息をするのも忘れていただろう。私の背中をその大きな手で抑え、もう片方の手は私の左手を優しく掴み、全体重を支えてくれている体制になっている事に完全に気が付くのは約三秒後の話だ。

「し…不死川、くん」
「アイツら多分志崎の事見えてなかったなァ。悪ィ、俺から言っとくわァ」

 彼が、私の最愛の想い人がそこに居たのだ。しかも私の背中と左手をお触りになっているのだ。え、もう一生身体洗わない。
 不死川くんは私の体制を元の位置に戻してくれた。目の前に不死川実弥くんが居る。その事実を受け入れる為の脳がオーバーヒートで死んでしまいそうだ。

「あ、ありがとう…わざわざ、支えてもらって」
「や、全然」

 必死に動悸を押し殺して平然装いながらお礼を言った。そして不死川くんは私の頭をポンポンと軽く撫でて「じゃあなァ」と行ってしまった。私は触れられた頭を抑え、不死川くんの背中を見つめる。何から何までかっこよすぎる彼の行動に私は動く事が出来なかったのだ。
 だが待て、待つのだ。私の目的はまだ果たされていない。リベンジすると先程心に誓ったではないか。
 後悔はしたくない。私はそう思いながら固まっていた身体をやっとの事で動かし、そして右手を伸ばしながら声をあげた。

「…し、不死川くん!」

 このまま終わるなんて地味な事、私はしない。もう自分に負けたくない。

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いくま(プロフ) - 紅乱さん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ございません。表現力や語彙力はまだまだ乏しい段階ではございますがこんなにも褒めていただき光栄です本当にありがとうございました、、!! (2022年4月8日 13時) (レス) @page49 id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱(プロフ) - 月並みな感想になってしまいますが本当に本当に面白かったです!作者様の語彙力、表現力が凄まじいのもあり完全に時間を忘れて物語にのめり込んでしまいました。素晴らしいお話をありがとうございました!! (2022年2月25日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ぽてちさん» コメントありがとうございます!!そして面白いと言っていただき本当に嬉しいです😭最後のイラストまで見ていただいて、、、落書き程度のイラストですが本当にありがとうございます。ギャグ線全開の夢主でしたが、最後までお付き合い頂きありがとうございました、、! (2022年2月8日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» 光華さん!お久しぶりです!!そしてコメントありがとうございます!いつも読んでくださって嬉しい限りです😭いつもありがとうございます、、! (2022年2月8日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 雪見だいふくさん» コメントありがとうございます!そして最後までお読み下さり本当にありがとうございました!恋愛よりもギャグをとったこの作品でしたが、楽しんでもらえて光栄です!!!😭 (2022年2月8日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いくま | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月8日 14時

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