へいさねみん【不死川実弥】

不意 ページ7

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　来週────11月29日。その日付にケーキマークのスタンプが記されていた。
　"さねみんの誕生日"と書かれたその予定。高校最後だし、18歳だし、ちゃんとお祝いしようと思って前からカレンダーにメモっておいたんだった。すっかり忘れていた。

｢……あーあ｣

　どうしてこうなったんだろ、なんて。本日何度目か分からない溜息が出てしまった。
　プレゼント渡したいな。いや渡せないか。買ったとしても渡す勇気がない。勇気がないって…我ながら中学生みたいな言葉だな。そういえば最後に話したのいつだっけ、先週から話せてないな。そんな事今までなかったからなぁ。
　あぁ、恋しいな。やっぱり私は彼の事が好きだったんだ。いや、好きなんてモンじゃない。好きなんて軽い言葉で終わらせたくない。高1から彼の事は勿論好きだった。でも今はその"好き"じゃない。きっと別の"好き"だ。


　会いたい。
　会いたい、会いたいよ。


　ちゃんと話し合いたい。何であの時私が避けてたのか、何であの時さねみんは怒ったのか。ちゃんと伝えたいし聞きたい。
　歩いていた足は立ち止まり、顔を俯かせる。こんなんで終わってしまうなんて嫌だ。



　───────仲直りが、したい。



｢…さねみん｣
｢何だよ｣
｢え｣

　不意に零れ出てしまった彼の名前を拾ってくれた相手が背後に現れた。すかさずその人の方へ顔をバッと向ける。いや、振り向かなくても分かる。
　何度も聞いた声だから。声の主が誰かって事くらい分かる。




　────────居た。





　私が会いたくて仕方がない人が、話したくて堪らない人が、不死川実弥が、少し息を切らしてラフな私服姿でそこに立っていたのだった。




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